「健康診断」と「人間ドック」の違いはご存知ですか? 検査項目の選び方を医師が解説
年齢・性別で異なる人間ドックの重要性
編集部: 人間ドックを受ける項目は、どのように決めるのがいいのでしょうか? 石岡先生: 各臓器のがんには、それぞれ発症しやすいタイミング(好発年齢)というものがあります。若いうちから高額な全身ドックを受ける必要は必ずしもないと考えます。例えば、30代・40代の方には、男性であれば大腸がん、女性であれば大腸がん、乳がん、子宮頸がんの発症頻度が特に高いため、これらを集中的に調べるのが良いと思います。胃がん検診は毎年受けているのに、大腸がん検診は全く受けていない、という方をよくお見かけしますが、より頻度の高いがんを調べないのは理に適っているとは言えません。その他、生活習慣病のリスクも一緒にチェックしておくのが良いでしょう。 編集部: 男性特有の健康リスクと対策について教えてください。 石岡先生: 男性に特有の疾患としては、前立腺がんが挙げられます。一般的には50代以降から増加し、検診では腫瘍マーカーのPSA検査が一般的に用いられます。ほかの腫瘍マーカーは臓器特異性が少なく、がん検診として有用とは言えないものがほとんどですが、PSAは数少ないがん検診に有効なマーカーと考えられています。 編集部: 女性が注意すべきがんはどうでしょうか? 石岡先生: 女性に特有の疾患としては、乳がんや子宮がんが挙げられます。AYA世代(思春期~若年成人世代)と呼ばれる若年層から多く見られるがん種で、20代のうちからの検診が望ましいですね。また、子宮頸がんはHPVワクチンによる予防効果が明らかとなっており、特に性交渉前の接種が有効なため、若いうちから親子間でがん検診に関心を持って取り組んでもらうことが重要です。
編集部まとめ
人間ドックは、生活習慣病やがんの早期発見のための予防医療として重要です。正しい医療知識を増やすことによって、多様なメニューや医療機関の中から、自分にとって本当に必要な検査を選び抜く力をつけ、コストを抑えて賢く人間ドックを受けましょう。メニュー選びに迷ったら、まずは信頼できる医療施設・専門医に相談してみることをお勧めします。
監修医師:
石岡 充彬 先生(日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック) 2011年秋田大学卒業。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて研鑽を積み、2021年同院健診センター・下部消化管内科兼任副医長。2024年、日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック開設。日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医。