検査結果見落とし男性死亡 静岡県立静岡がんセンター、遺族と和解
静岡県立静岡がんセンター(長泉町)は26日、がん治療をしていた県東部の60代男性が別のがんを患っていることが検査で明らかになっていたのに担当医が見落とし、治療開始が遅れ死亡する医療事故があったと発表した。遺族側に和解金1億円を支払うことで合意した。 同センターによると、男性は2017年11月に同センターで口腔(こうくう)底がんの治療を始めた。手術前の検査で食道がんステージ2を併発していることが分かったが、担当医が報告書の確認を怠り、同12月末に口腔底がんに対する切除術が行われた。 男性は飲み込みにくさの自覚症状から18年3月に別の病院で検査を受けたところ、進行食道がんと指摘され、再び同センターを受診。担当医が過去の検査結果を確認し、見落としが発覚した。改めて検査をし、食道がんはステージ3に進行していることが判明。化学放射線治療を行ったが、口腔底がんの再発もあり、同10月に死亡した。 通常は検査結果を説明しながら入院予約をするが、患者の希望で全ての検査を終える前に予約をしたことから、担当医は入院時に説明しようと考え、結局確認しなかったという。 同センターは18年5月に外部専門家を含む事故調査委員会を開催。19年4月に報告書を遺族に提出し、センターの対応に問題があったと認め謝罪した。 県庁で記者会見した小野裕之病院長は「患者様に心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、多大な心痛をおかけしたご家族にもおわびする」と陳謝した。再発防止策として、検査結果の再確認システムの見直しなどに取り組むとした。 同センターは和解に関する議案を県議会12月定例会に提出する。
静岡新聞社