金融市場も“アメリカ・ファースト” これから始まる「トランプ相場」を生き残る投資戦略【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
2.乱気流に突入するマーケット
■トランプ政権の誕生を受けて、世界経済やマーケットは乱気流に突入しつつあります。ちょうど、積乱雲を前にした旅客機のように、私たちも座席へ戻り、リクライニングを直し、シートベルトをしっかり締めて、これからやってくる「揺れ」をやり過ごす必要がありそうです。 ■トランプ氏が打ち出すであろう政策が起こす「乱気流」の中でも最も警戒しなくてはならないのは、対中強硬姿勢のさらなる強化でしょう。既に対中強硬派として知られる人物の政府高官への任命が報じられていますが、米国を中心とする国際秩序に公然と挑戦し、領土的な野心を隠そうとしないように見える中国に対し、新政権はその封じ込めに本腰を入れてくる可能性が高そうです。こうした動きは、隣国として中国と深い経済的なつながりを持つ日本にとっては頭痛の種となりそうです。 〈裏切り者への鉄槌?ASMLショック〉 ■10月15日、オランダの大手半導体製造装置メーカーASML社は決算を発表しましたが、第3四半期の受注額が前四半期比約▲53%の急減となったことが嫌気され、株価は1日で約▲15.6%下落しました(図表2)。決算発表後、ASML社のフーケCEOは、同社にとって最大の市場である中国向けビジネスが、米国の圧力により影響を受ける可能性について言及しています。 ■ASLM株の下落を受けて、同様に中国向けビジネスに積極的とされる日本の半導体関連株も、大きく連れ安となっています。こうした懸念は、半導体関連株に限った話では済まないかもしれません。というのも、日中の密接な経済関係から、半導体以外の電子部品、自動車・同部品、機械などの工業製品、高品質で評判の良い生理用品、そしてアパレル小売りまで、日本企業は幅広いビジネスを中国で展開しているからです。 ■もちろん、こうしたビジネスが全て大きな制約を受ける訳ではありません。しかし、経済安全保障の観点から重要な分野については、今後米国から「踏み絵」を迫られる可能性が高く、日本企業は厳しい「二者択一」を迫られることとなりそうです。
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