「このままではクビになる」大敗続いた22歳ガールズケイリン選手が“負の連鎖”断ち切り覚醒「もう簡単には負けられない」
「このままではクビになる」危機感と覚醒
2023年も2月高知、7月四日市では決勝に乗ったものの、思ったような自力は出せず、成績も低迷。ガールズケイリン選手のクビの目安と言われる競走得点47点を2023年前期には下回ってしまった(2023年前期46・60)。 「このままではクビになる」。尻に火が付いた渡部は同年夏頃から養成所入所を目指すアマチュアと一緒に中身の濃い練習をスタートさせた。10月は腰痛により1か月レースから離れてしまったが、しっかり休養もして11月の前橋に臨んだ。 いざ、猛特訓の成果を見せるとき。自信を持って臨んだ1走目は4着で、最終ホームで前々に攻めるレースは明らかに休む前とは違っていた。2走目は打鐘過ぎからロングスパートを敢行し、後続に抜かれることなく1着。決勝もコレクション優勝3回の実力者・長澤彩を叩いて先行し、本デビュー後初優勝を飾った。 「師匠の練習とアドバイスのおかげです。余計なことは何も考えずレースに行って、とにかく力を出し切ることだけ考えて走ったら優勝ができた。この優勝で競走得点のことを心配しなくて良くなったし、ホッとしました」 この優勝以降も、2024年7月の平塚まで21場所連続で決勝進出。すっかり強い選手に化けた印象で、自力を出しても勝てなかった渡部遥はすっかり姿を消している。 「以前は負け癖が染みついてしまっていた。負けることに慣れてしまって正直、大敗しても悔しく感じないような時期もありました。でも最近は負けることがすごく悔しい。車券の人気にもなっているので、簡単には負けられないという気持ちになっています」 中心選手のひとりとしての自覚を持ち、ファンの車券に貢献する走りを意識している。 「練習でもレースをイメージしている。師匠は自分が疑問や課題に思っていることを聞くと答えてくれるし、足りない部分を補う練習をしてくれます。最高の環境でトレーニングができています」 師匠の野村典嗣も渡部に期待を寄せる。 「初めて会ったときから(渡部遥は)恵まれた体格だった。試しにワットバイクへ乗ってもらったらスニーカーでいい数値を出したのでビックリしたのを覚えています。点数を落としていた時期もあったけど、今は大丈夫でしょう。ビッグレースで活躍できる力はあると思う。せっかく競輪選手になったのだし、いい景色を見てもらいたい。先行で勝負できるガールズケイリン選手は少ないと思うし、遥には頑張ってもらいたい。ダッシュ力が付いたら上でも活躍できると思います」