人が苦手で断り下手は大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)」受動群かも!?【40代50代・「大人の発達障害」を理解する③】
大人の発達障害のひとつに「ASD(自閉スペクトラム症)」がある。その受動型の人は他人とかかわるのを避け、自分の気持ちや考えを表すのが苦手だ。周りからはおとなしい人と見られているが、そんな人の困り事について、医学博士で発達障害を専門とする司馬理英子先生に伺った。 大人の発達障害には大きく分けて、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)がある。ASDには受動型、孤立型、積極奇異型が、ADHDには不注意型と多動・衝動型がある。それぞれに困り事が違う。 ※詳しくは第1回<大人の発達障害とは? 今、増えている理由、症状や特徴、治療法について>参照。 「今回取り上げる、ASDの受動型の人は特に人とかかわることがとても苦手です。そんなケースを見ていきましょう」(司馬理英子先生)
【ASD受動型のA子さんの場合】人が大勢集まる場、特に飲み会が大の苦手
A子さん(42歳)は既婚で、小学生の息子が一人と夫の3人家族。ある会社の経理部に勤務している。口数が少なくおとなしく、勤務態度は真面目だ。 業務以外で自分から人に話しかけることはなく、周りから話しかけられれば最低限の返事はするが、それ以上の会話はしない。時々、先輩や同僚からランチや飲み会に誘われ同行することもあるが、自分から積極的に会話に参加することはない。 特に苦手なのが、会社の忘年会など大勢が集まる場だ。そんなときも自分から人に話しかけることはなく、いつも一人でおとなしくしている。 子どものママ友の食事会に誘われて、断れずに参加したときは、矢継ぎ早に飛び交う話題や情報についていけず頭が真っ白に。一度に多くの情報が入ってくると、その処理が追いつかずにオーバーヒート。突然、意見を求められても答えられず、へとへとに疲れてしまう。
NOと言えずに人の言いなりになりやすい
特に自分の気持ちを伝えるのが苦手で、頼まれると断れず、やりたくないことでも受けてしまう。先日も、用事があり早く帰る予定だったが、急な仕事を頼まれ、断り切れず残業に。泣く泣く予定を延期した。子どものPTAでも断り切れずに役員にされ、そちらの仕事も抱えるはめに。 知人がやっているネットワーク販売も断れずに、サプリメントや化粧品の定期購入に同意してしまい、出費を増やしてしまったばかりだ。 こうしてやることが増え、さらに子どもの世話や家事が重なると、いっぱいいっぱいになってパニックに! 家のことがおろそかになり、出費がかさむなどで、家庭の雰囲気も険悪だ。 【ASD受動群タイプの特徴】〇は積極奇異群と共通 ●何をするのも受け身で自分から人にかかわるのが苦手 ●自分の気持ちや考えが伝えられない ●ノーと言えずに、人の言いなりになりやすい ●感情表現が苦手で表情が乏しい、もしくはいつもニコニコしている ●外に出かけるのが好きではない 〇相手の気持ちがわかりにくい 〇言われたことを真に受ける 〇興味のあることにのめり込む 〇自分の規則やルールを守ろうとする 〇予定変更が苦手 「“普通(定型発達)”の人でも、口数が少なく人との会話が苦手な人はいると思いますが、ASDの人はその苦痛に感じる度合いが違います。特に大勢が集まった場での会話が苦手で、想像以上に頭が混乱して、疲労困憊してしまいます。 もしも職場や友人などにこうしたA子さんのような人がいる場合、周りがさりげなくサポートしてあげることが大切です」