経済不調にも関わらず、習近平政権が「腐敗撲滅」を進めるのはなぜか
戦略科学者の中川コージが2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国経済の今後について解説した。 【写真】習近平の肖像画前を行進する儀仗兵
経済が苦しいにも関わらず、国家安全に舵を切る理由
飯田)中国の足元の経済は、不動産などが不調だと言われています。実際はどうなのでしょうか? 中川)中国崩壊論に対して、私はたびたび疑問を呈してきました。実際に経済・不動産不況を始め、景気が悪いことは間違いありません。月に1回ほど中国当局が外資企業に対して説明会を行うくらい、下からの要望が来ているのです。彼らがこのようなことを行うのはレアケースです。
将来的な経済成長のためにも、ここで腐敗の膿を出さなければならない
中川)よく言われているのが、「国家安全のために経済を犠牲にしている」という話です。日本国内でも「国家安全ばかりではなく経済もやれば彼らの得点になるのに」という論調をよく見ます。彼らの計算としては、経済に圧力を掛ければ自分たちの力が削がれることはわかっているので、経済も進行したいのですが、いまはそのフェーズではないと計算した上でやっています。 飯田)いまやる場面ではない。 中川)まだ腐敗がまん延していて、それを叩かないと、経済も含めて今後「より悪くなるだろう」という計算のもとに、ここで膿を出しておかなければいけない。だから国家安全に舵を切っているだけです。経済を犠牲にするという話ではありません。まずこの大前提があります。
基本的には、「中国経済が不調だから投資しない」というのが合理的な構造
中川)その上で、中国への直接投資が大分減っています。 飯田)海外からの直接投資ですね。 中川)外資系企業からの直接投資は2023年比で82%減となり、ガクッと減っています。ポイントとして、我々はデカップリングやデリスキングを行い、各国の経済安全保障政策において「中国をサプライチェーンから排除しよう」という傾向があります。しかし、これだけを理由にしては間違えてしまうと思うのです。確かに「政治がそう言っているから我々は投資しにくい」という部分はありますが、基本的には「中国経済が不調だから投資しない」というのが合理的な構造です。すべてが経済安全保障の政策に掛かっているわけではありません。直接投資が減ったのは政治主導のデカップリングだけではなく、大きな理由としては、中国が経済不調だから投資していないという可能性があります。