経済不調にも関わらず、習近平政権が「腐敗撲滅」を進めるのはなぜか
中国経済が復調した際には再び「サプライチェーンの中国依存」が回復する
中川)政治主導によるデカップリングと、経済不調による直接投資が単純に減ったという2つの要因が混ざっている。その前提に立つのであれば、もし中国経済が復調した場合、政治的にはデカップリングしたいけれど、また直接投資が増えてしまうかも知れない。そういうことまで想定できます。 飯田)中国経済が復調したときは。 中川)中国への直接投資が減り、ようやくサプライチェーンでデカップリングができた、という喜ばしい話では決してありません。中国経済が復調したら回復する可能性もあるので、そうならないように、引き続きサプライチェーンのポートフォリオを広げていく。今後はその努力が必要になると思います。
腐敗の部分を叩かないと経済も何もない
飯田)中国当局として、ある程度は経済不調を織り込みながら進めていく。反腐敗はずっと行われていますが、まだまだ足りないのですか? 中川)全然足りないですね。1月に行われた中央規律検査委員会の総会でも、金融セクターや不動産セクター、生体バイオなどに関して、腐敗が広がっていると指摘されています。また、5年遅れくらいであった軍内での腐敗も全然止まらず、2月19日の発表では、中央全面深化改革委員会で習近平さんが話したテーマに出ています。簡単に言うと、4つくらい語られた大きなテーマの1つとして、「腐敗を減らしていく」ということが強く語られていました。習近平氏や指導部の頭のなかには、「まず腐敗の部分を叩かないと経済も何もない」というレベルの問題になっており、決して最近出てきた話ではありません。 飯田)腐敗をまず叩かなければならない。 中川)毛沢東以降、腐敗はずっとあったのですが、ようやく最近になって「腐敗撲滅」が出てきた。習近平政権になってから(腐敗が)増えたのではなく、習近平氏が叩いて「これだけあったのだ」ということが見えてきたのです。叩いたことで大量の案件が出たので、ここでやめてしまうと、また腐敗勢力がまん延してしまいます。習近平氏としては、「経済などやっている場合ではない」という話なのだと思います。