「容積日本一、造形は別格」国宝船形埴輪すごさ解説 文化庁の調査官 三重・松阪
三重県松阪市外五曲町の市文化財センター(福田哲也所長)は11月30日午後1時半から本町の市産業振興センターで、文化庁文化財第一課の横須賀倫達文化財調査官(52)を招き、「三重県宝塚1号墳出土埴輪(はにわ)のここが凄(すご)い!」と題した講演会を開いた。市民ら約150人が松阪初の国宝について理解を深めた。 文化財センターはにわ館で開催中の特別展「王権と首長墓の埴輪」の関連行事として開催。宝塚町の宝塚1号墳から出土した国内最大級の船形(ふねがた)埴輪など278点は今年8月、国宝になった。横須賀さんは文化庁で船形埴輪などの国宝指定に向けた改めての調査などを同センター職員と担った。 横須賀さんは文化財保護法を踏まえて国宝について「『文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる』としている。宝塚の埴輪は重要文化財の中で学術的な価値が極めて高いと評価された」「埴輪だけで国宝になったのは『埴輪武装男子立像』(現在の群馬県太田市で出土)に続き2件目」とした。 横須賀さんは、文科大臣に諮問を受けて国宝候補を選ぶ文化審議会が詳細の調査を依頼する専門調査会について言及。「文化財のエキスパート10人に対して私たち文化庁の職員がプレゼンを行っている」と明かした。その際に使った調書を踏まえ「(船形埴輪は)造り出しと墳丘をつなぐ土橋の西側、溝中から原位置を保って出土し、船首を溝の最奥部、土橋方向に向けて置かれていた。全長140センチ、台を含めた高さは94センチで極めて大形の埴輪船で、(欠片が)9割以上が残るその状態とともに特筆される」と述べた。 続けて「造形が美しい。これだけの大きさで9割以上残っていたことは奇跡としか言いようがない」と評価。また、考古学ファンから「松阪の船形埴輪は大きさが日本一なのか」と聞かれるといい「長さとしては他に長いものが出ているので、容積的には日本一と答えている。造形美は別格」などと伝えた。