日本で唯一? 拷問器具収集家・ヌガザカ「イベントに持っていくのは潰す系にしてます」
◇拷問器具には独特の機能美がある 取材していても、嬉々として取材陣に拷問器具を見せてくれるヌガザカ氏。そんな彼が拷問器具を収集していて、一番テンションがあがる瞬間とは? 「一番テンションがあがるのは、海外のサイトで狙っていた拷問器具を見つけた瞬間です。狙っているものは何点かあるんですけど、相手が博物館とかなので、手強いです(笑)。『アイ・アム・キュレーター(博物館などで資料の収集や管理をする人)』とか言って、なんとか安く提供してもらえないかな、とか(笑)。僕も拷問器具を見せるイベントをやっているんで、広義では間違ってないですよね(笑)。 現在、狙っているのは3点程度です。あとは大工をやっている友人に、ご飯をおごって、懐柔して、レプリカを作ってもらったり。持つべきものは友ですね(笑)。 一番高いものは『ブレストリッパー』。17世紀のオーストリアで使われたものなんですが、これは女性の胸をちぎるタイプの拷問器具です。これが進化した『スペインの蜘蛛』という拷問器具は『ブレストリッパー』の使いにくいところを改良したものと言われています これは、異端者のフォークです。これは首につけるんですけど、この尖った部分が縦になっているんで、眠りについた瞬間に、グサッと刺さるわけですね。入手した実物がかなり大きくて、これだとスタローンやシュワちゃんみたいな屈強な大男でないと使えないように感じました。 レプリカの方が小さくて実物とされるサイズに近い印象です。これだと僕にちょうどいいサイズで、栄養状態が良くなかった当時の人にも合うのでは、と。え? あ、はい、もちろん買ったものは自分で試しますよ(笑)」 ブレストリッパー、異端者のフォークと、それぞれを実際に出して見せてくれるヌガザカ氏。拷問器具の魅力について語ってくれた。 「拷問器具って、人を苦しめるために最適化されていったものなので、芸術とは言いませんが、独特の機能美があると思っています。そこが人を惹きつけるんじゃないか、そう僕は推測していて。怖くてもちょっと見てしまう。人間だって、少し危険な香りのする人に惹かれるものじゃないですか。 これらは、すべて海外の古物商と直接やり取りして購入しました。“アイムプア、円安、円安”と言ってね。ブレストリッパーは14万円くらいだったと思います。博物館にあるようなもの、と考えたら安いと僕は感じます。まあ、ひとつ買うとしばらく納豆・味噌汁・ご飯の生活ですが……。 実際に収集してみて、海外の拷問器具は女性をターゲットにしているものが多いという印象です。それは魔女裁判だったりとか、男性をたぶらかす良くない存在として見られていた時期があるからなのか。腹ただしい話ですが、狙われやすかったのかもしれません。そのなかでも、このワニのペンチは男性の睾丸を潰す専用の拷問器具です。これは送料込みで8万円しました」 ◇家族は生暖かい目で見ています ちなみに、ヌガザカ氏以外に拷問器具収集家は日本にいるのだろうか。 「僕以外にも拷問器具収集家がいる気配はあるんですけど、絶対に姿を現さないんですよ。自分のほうが持っている、という人間が出てくると踏んでいたんですが、5年経っても一切出てこない。でも、僕が最初に名乗った以上、僕が祖ということにできるんで、まあよかったかな。 あとは、イベントなどで知り合ったオカルトコレクターの方、例えば田中俊行さんが情報をくれたり、逆に僕も教えたり。そんな闇のネットワークができつつあるんで、そこもうれしいですね」 イベントに出演するということは、これらの器具を持ち歩いているということか? それはちょっと危なすぎやしないだろうか。 「持ち歩いていて職質されたら……あまり心象はよろしくないですよね。だから、イベントに持っていく際は、細心の注意を払っています。警察に務めている友人がいるんで、自分が持っているもので、“どれが持ち歩いてもよくて、どれがダメ?”と聞いたことがあるんですが、“逆に、どれかは大丈夫だと思ったの?”と言われました(笑)。 まあでも、この親指を潰す拷問器具は“万力です”と言い張れば大丈夫そうだし……。基本的に刃があるものはダメなのはわかっているんで、イベントに持っていくのは、潰す系の拷問器具にしています」 改めて、拷問器具を集める喜びについてヌガザカ氏が語ってくれた。 「映画や小説に登場するようなものが、自分の手元にあるという喜び。国内では、ほぼないものを所有しているうれしさですね。『負の遺産』というと言いすぎかもですが、そういうものに引き寄せられる魅力は理解していただけると思います。 もともと自分自身、コレクター気質ではあるんですが、コレクターには3つ大事なことがあると思っているんです。まずはコレクションアイテム、そしてコレクター仲間、最後に発表できる場所。発表できる場所というのは綺麗に言い過ぎたんですけど、コレクターって、やっぱり自慢したいんですよ(笑)。だから、イベントとかでみんなが興味を持って拷問器具を見てくれたり、話を聞いてくれたら本当にうれしいです」 ちなみに、そんなヌガザカ氏を家族はどう見ているのだろう。 「家族は生暖かい目で見てくれてます。個人的には、スニーカーを履かずにコレクションしている人と変わらないと思ってますし、それがスニーカーか、2~3世紀前の血なまぐさい鉄の塊かってだけの話(笑)。 友人にも、言っても大丈夫そうな友人には伝えてます。いきなり会ったばかりの人に“趣味は拷問器具収集です”は詰み、ですよね(笑)。ただ、自分が活動しているサブカルの界隈は、そこらへんの懐が広い方が多いので、それは助かっています」 自称ではじまった「拷問器具収集家」という肩書にも、動きがあったという。 「フジテレビさんから拷問器具監修の依頼が来て、僭越ながら“ギャラはいらないので!”と断って、あるお願いをしたんです。それは自分のアイテムをドラマに使用してほしい、そして最後のスタッフロールに『拷問器具収集家・ヌガザカ』と入れてほしいと。こうすることで、自称であった『拷問器具収集家』という肩書が意味を持ち始める。そこからは堂々と名乗っております(笑)。 よくイベントで“触っていいですか?”と聞かれるんですが、僕はどうぞ触ってくださいと言います。だって人間を痛めつけるものですから、そもそも頑丈で丈夫にできている。まず壊れません。だから、みんなにもっと触って体感していただきたいんです。わかりやすく説明して、楽しく勉強できるのが理想です。拷問器具が、ヌガザカというフィルターを通して、もっとポップなものになればいいなと思っています」
NewsCrunch編集部