【40代・50代の「医療未来学」】未来医療によって、死は怖くなくなるの?
不調があると「重篤な病気になって、もしや死んでしまうのでは?」と、つい不安に…。でも、医療未来学の専門家、医師・奥真也さんは「医学的なファクトから未来を予測すると、死ぬまでのプロセスも、おおよその見通しが立てやすくなるんです」と言う。病気や死の不安に振り回されず、人生をコントロールすることはできるのだろうか?
未来の死に対しても、見通しは立てやすくなっている
「ピンピンコロリ」という言葉には、どうしても運・不運というイメージがつきまとう。誰もがもっと穏やかに、死を怖がらずに生きる未来は訪れるのだろうか? 「僕は実は子どもの頃、死というものが怖くて仕方がなかったんです。毎日学校から家に帰る間も、『自分はどんなふうに死ぬのだろう』など、いろいろ考えてしまうような小学生でした。でもそれが、35歳くらいの頃からまったく怖くなくなったんです」(奥先生) それはなぜだろう? 「医療未来学というジャンルを通じて、『未来では、死のプロセスも事前にある程度の見通しは立てられる』という考え方に到達したからですね。 この連載でもお話をしましたが、医療未来学はあらかじめ予定されている医療の未来をたどっていく学問です。例えばがんも、20世紀では治すのが難しい病気でした。でも21世紀の今は、仮にがんになったとしても切らずに治せる薬も出ているし、余命も長くなり、ゆっくり生きられるようになっていることを、第1回<【40代・50代の「医療未来学」】がんは「簡単に治せる」病気になる?>でお話ししましたよね。 年をとったら、何歳ぐらいからどんな病気や不調に見舞われやすいのかというデータもあるくらいなので、それらをコントロールできるよう、病院や薬、テクノロジーの力を借りていけば、ゆっくりと衰えて、やがて死を迎えることもできるようになります。 僕も自分自身の体力について、『60歳になってちょっと肩も痛くなってきたけど、それって普通のことだよな。そんなふうに体力はゆっくり落ちていくけれど、もうわかっている未来を考えれば、90歳、100歳まではパワーを保つことはできるよな』と思っています。つまり長生きに関する安心な情報を得るほど、不安はなくなっていったんですよね。もちろん今だって、急な心不全などの突然死や、交通事故死などはありますが、そういったことさえ避けることができれば、そう極端に困ることはないのでは? と思っているんです」 いたずらに不安にならないためにも、医療未来学を知ることは有効のよう。 「そうですね。医療の分野という軸だけではなくて、社会の流れなども含めたさまざまな軸も通して見てみると、『すべての病気の分野は、おおよそこんなふうになるよね』という地図が出来上がってきます。その地図を見る限り、極端に大きく失敗しそうなものは、もうあまり残っていないのじゃないかなと思っています。『それ、誰かが伝えたほうがよくない?』と、以前友人に言われたことがきっかけで、じゃあ自分がやろうかな、と医療未来学に関するさまざまな本を書くようになりました。 なかでも2019年に出版した『Die革命 医療完成時代の生き方』(大和書房)という本は、死に対する概念をマインドセットしてもらう意味でつけたタイトルでもあるんですよね」 『Die革命 医療完成時代の生き方』には、「死ぬことを考えずに生きる、そういう時代がもう目の前に来ています」と書かれていた。先生の本を読めば、確かに死は怖くなくなるかも。