《安倍政権5年》特区『民泊』解禁 さらに新法律成立、競争激化の可能性も
安倍政権が2012年12月に発足して約5年経ちました。そのときの衆院選は「日本を、取り戻す」を掲げ、公約では「経済」「教育」「外交」「安心」の再生を訴えました。政策によって日本はどのように変化したのか。“再生”はできたのでしょうか。安倍政権5年を検証します。 今回は経済・地域再生を阻む“岩盤規制”の突破口として、政権が肝いりで取り組んできた国家戦略特区について、規制緩和は何をもたらしたのか 。民泊解禁となった東京都大田区のケースをみていきます。
2014年から特区で「民泊」可能 背景には外国人観光客急増による宿泊施設不足
安倍政権が誕生した2012(平成24)年以降、日本を訪れる外国人観光客数は急増しています。政府観光局の統計によると、第2次安倍政権が発足した翌年の2013年には約1036万人の外国人が日本を訪問。初の1000万人を突破するという節目の年になりました。 その後もビザの緩和・円安といった要因によって、訪日外国人観光客数は増加を続けています。昨年には年間2000万人という大台も軽々と突破し、今年も訪日外国人観光客は昨年を上回るペースで増えつづけています。 外国人観光客の増加は日本経済に“福音”をもたらしていますが、他方でホテルや旅館といった宿泊施設の不足も問題として浮上しています。宿泊施設の不足を補うため、2014年4月に政府は国家戦略特区で、旅館業法の規制緩和を打ち出しました。これにより、ホテルや旅館に課される厳しい安全・衛生基準の規制を部分的に緩め、家の一室を貸し出せる「民泊」を可能にしたのです。
大田区は日本の空の玄関口・羽田空港を抱える
特例的に民泊が解禁されたことを受け、東京都大田区は民泊を可能にする条例を制定。昨年1月から民泊をスタートさせています。 加計学園問題などもあり、国家戦略特区には負のイメージがついて回るようになっています。しかし、政府が取り組む特区は多岐に及んでおり、それだけで特区を論じることはできません。 国家戦略特区で民泊を解禁した自治体として知られる大田区は、日本を代表する空の玄関口・羽田空港を抱えています。従来、旅行者などに部屋を貸すという宿泊ビジネスは、旅館業法にのっとっています。旅館業法にはさまざまな制約があり、ホテルや旅館といった宿泊事業に参入することは決して容易ではありません。 今般、訪日外国人観光客が急増して宿泊インフラの整備が追い付かない状況は、政府や自治体にとって大きな悩みの種になっていました。そこで、国家戦略特区で旅館業法の規制を緩和することが検討されたのです。そして、特区として民泊が解禁されたのです。