「クレジットカードを魔法のカードだと思っていた」会社員を辞め、金融教育に取り組むわけとは
金融をもっと身近にするために
しかし、最初から多くの人々に受け入れられたわけではない。 「金融は怪しい」という偏見が根強く、学校現場の抵抗感は強かった。 「あるとき、教員をしている知人に金融教育を始めたことを話したところ、教育はお金儲けのために仕事を行っているわけではない、金融業界の感覚を持ち込むべきではないといったような反応をされました。私はそこで、この学校に導入しようと決意しました」 それから毎週のように、どんな切り口なら受け入れてもらえるのか、その知人と根気強く対話を重ねた。 「生徒たちは今、いろいろなコンテストへのチャレンジに意欲的」 「推し活がトレンド、推し色がある」 「今の子たちは誕生会にスマホで記念の動画を作っている」 「寄付教育なら学校として取り組みやすいかも」 現場の先生から聞いた今どきの生徒の様子をヒントに、お金の機能に着目した8つの「力」(使う・稼ぐ・納める・貯める・備える・贈る・借りる・増やす)それぞれにカラーを与え、いずれかをテーマに選んでスマホで動画を制作し、競う中高生の探究型コンテストというプログラムが誕生した。 このプログラム「FESコンテスト」は、消費者庁等の後援を得たことで全国の中学校・高等学校に受け入れられ、第1回にもかかわらず156もの作品が集まった。 もともと小学生向けの作品を募集する趣旨であったが、中高生ならではの視点と作品から得られる学びが、幅広い世代の共感を生むこととなった。 第2回となる今年は、金融庁の後援も得ており、初の地区大会を香川県と千葉県で開催する。 機構の思いに共感し入会した認定講師はすでに60名に達し、全国各地を拠点として活動している。講師たちは、思いを共有する学校の先生たちの協力を得て、機構の大学生メンバーとともにワークショップやコンテストの運営を行っている。 平井さんの次の目標は、2030年までに47都道府県で地区大会を開催して金融体験の地域間格差を埋め、すべての地域で、中高生が親世代や祖父母世代とお金について対等に話せるような「生きる力」を育むことだ。 「金融分野は家族の教育が天井となりがちです。だからこそ、金融教育を受けたことのある子どもたちがどんどん増えて主流となれば、消費者全体の金融リテラシーも変わってくると思っています。金融について興味を持つきっかけを提供することが我々の使命です」 今年8月に、平井さんの地元である香川県で開催された地域ワークショップ「第2回FESコンテストへの道in香川」には20名以上の意欲的な中高生が参加した。 大学生のサポートのもと、中高生たちは金融についてプロから学び、伝えてみたいことを思い思いの視点で動画の制作を行った。 これからの地域を担う若者たちが、学校や家庭を超えた世界で縦のつながりを築き、金融について学び合い助け合う新しい仕組みがいま生まれつつある。
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