日本造船所、バルカー受注船価1割高。27年船台逼迫、全船型値上げ。中大型船けん引
日本造船所のバルカーの受注船価が上昇している。特に中大型船の値上がりが鮮明で、カムサマックス、ケープサイズは前年の船価水準から1割程度高い成約が出ている模様だ。今年のドライ市況はFFA(運賃先物取引)が年末に上昇に転じ、スポット用船料が例年軟化する1―3月に堅調に推移したことで先高観が台頭。船主心理が改善しているところに、バルカーを主力とする日本造船主要各社が2027年船台をほぼ完売したことを受け、国内外の船主が船台不足への焦燥感を強め、一段高い船価で発注に踏み切っているようだ。 「国内造船所によるバルカー受注船価が全船型で上昇している。建造ヤードが限られるケープサイズ、カムサマックスの上昇率が特に大きく、ウルトラマックスも強含みだ。ハンディサイズは徐々に値上がりしているものの他船型に比べると発注残が多いため、横ばいに近い値動きになっている」 足元で成約されている新造案件の船価相場について、商社関係者はこう話す。 大型のケープサイズでは複数の国内造船所が27年納期の18万重量トン型(180型)ダンケルクマックスを今年に入り、海外船主から7000万ドルを上回る高値で受注した。昨年前半には6500万ドル前後で成約されており、足元の受注船価は1割弱上昇している計算だ。 82型カムサマックスは、バルカー4船型の中でも「27年の期近船台での引き合いが特に強い」(商社船舶部)。足元では一部で4200万ドル弱の高値成約が出ている模様。値上がり幅は昨秋との比較で1割弱に達しているとみられる。 64型ウルトラマックスでは、直近の最高値として3800万ドル超の成約が出ているようだ。受注船価の上昇率は上位2船型に比べればやや小さいが、昨秋の相場から5%以上上昇している。 40型のハンディサイズは足元の受注船価が3300万ドル弱とみられる。同船型は「日本造船主要各社がここ2年で集中的に受注を積み上げて船隊更新需要が一服している」(同)といい、底値は切り上がっているが昨秋からほぼ横ばいで推移している。 日本造船主要各社は年初時点で3年超の手持ち工事を確保しているところが多く、「24年は採算重視で案件を選別する姿勢を強め、年末までに27年船台1年分を売り切る程度に受注ペースを落とす公算が大きい」(同)とみられていた。 ところがバルカーのFFAが年末に上昇に転じたのを機に、海外勢を中心に引き合いが急増。今年に入り、ドライ市況が1―3月の閑散期に上昇局面に入ったことで用船市況の先高観が高まり、国内外の船主が27年船台を押さえる動きが一気に加速した。 日本造船主要各社は主力の中小型バルカーを軸に短期間で受注を積み上げ、予想に反して27年船台の早期完売に成功した形だ。 この結果、主要日本造船所は1―3月の商談で、00年代の海運ブーム期以来となる4年前後の潤沢な手持ち工事を確保するに至った。さらに鋼材を中心に資機材価格の上昇圧力が高まる中、これ以上の受注を急ぐ局面ではない。一部は28年船台の商談に入っているが、今後はより好条件の新造案件を選別して受注に動く公算が大きく、新造船価は当面高止まりしそうだ。
日本海事新聞社