プーチンに共感示すトランプ派――ウクライナ軍事関与を遠ざけるアメリカ社会の大分裂
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ロシアのウクライナへの侵攻 は、アメリカのジョー・バイデン大統領が、本来は開示しないインテリジェンス情報を先制的に開示して、ロシアと欧州諸国に警告していたにも拘わらず、抑止できなかった。開戦後、やはりアメリカの情報は正確だったいう感想もよく聞かれるが、そうであればこそ、アメリカはロシアの軍事行動に確信がありながらも、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟していないという表向きの理由で軍を送らなかったことになる。やはりアメリカは以前とは大きく変わったと言わざるを得ない。 また、ロシアがドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国を国家承認した段階で、米国と欧州はロシアへの経済制裁を強化したが、これがロシアの侵攻への抑止とはならなかったという事実も世界で共有された。我々は冷戦後の秩序崩壊を目の当たりにしているが、その中でウラジーミル・プーチンの行動も普通ではないが、アメリカの行動の大きな変化と国内の認識をよく理解する必要があるだろう。 アメリカが軍をウクライナに送ることは、エスカレーションによる核戦争の危機というリスクがあるためできなかった、という理屈付けはできる。しかしロシアも核戦争を起こしたくないだろうから、それはウクライナへの攻撃をためらわせる抑止力ともなる。そもそもリスクのともなわない抑止力はないのである。
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渡部恒雄