なぜ「経営」は人から学ばないのか? これからの時代に必要なのは経営者と伴走する「参謀」
「勉強やスポーツを先生や経験者から教わるように、経営も人から教わってもいいはずです。アスリート選手がコーチを付けるように、『参謀』を導入する経営者が増えたら、日本経済はもっと発展するのではないでしょうか」 そう語るのは、著書に『The 参謀 -歴史に学ぶ起業家のための経営術-』を持つ資産防衛・ビジネスコンサルタントの松本隆宏さんだ。 なぜ今の日本の企業経営に「参謀」が必要なのか、参謀とはどんな人材なのか、そのメリットは何か、松本さんに話を聞いた。
◆なぜ多くの経営者は「経営」を人から教わらないのか?
「学生時代の部活動では、野球でもサッカーでも水泳でも習字でもピアノでも、経験のある顧問の先生やコーチに習ったはずです。受験勉強も、教育のプロである予備校講師や塾講師に教わりました。社会人になってゴルフ教室や英会話教室に通っている人もいるでしょう。 何か新しいことを学ぶ際には、先生やコーチに頼る。これは当たり前に受け入れられていることですが、なぜか経営については『誰かに習う』ということをしません。考えてみると、これはとても不思議なことだと思いませんか? 他人から経営を教わる機会があってもいいのではないでしょうか」(松本さん)
◆優れた経営者には優れた「参謀」がいる
参謀というと、中国の三国志時代に蜀の初代皇帝となった劉備玄徳の軍師であった諸葛孔明や、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という戦国期の天下人3人の軍師をつとめた黒田官兵衛などがイメージされるかもしれない。 「軍師や参謀が重要視されたのは、歴史上だけではありません。古今東西の優れた経営者たちは、みな一様に、他人の力を借りる大切さを知っていました。 例えばフォード・モーターの創設者であり自動車王と呼ばれたヘンリー・フォードは、『自分以外の人間に頼むことができて、しかも彼らのほうがうまくやってくれるとしたら自分でやる必要はない』という名言を残しています。Appleのスティーブ・ジョブズも、Googleの創業期を支えたことで知られる名コーチのビル・キャンベルに毎週のようにアドバイスを求めていたと言われています。 このように、優れた経営者は自分だけの力に頼らず、他人の力や能力、アドバイスを上手に取り入れていた人々ばかりです。どんなに優秀な経営者でも、一人の力でできることには限界があるので、他人の力をうまく借りることが重要だと体感的に理解していたのだと思います」(松本さん)