なぜ「経営」は人から学ばないのか? これからの時代に必要なのは経営者と伴走する「参謀」
◆専門家を取りまとめ、経営者に寄り添う「伴走者」
「私はこれまで『地主の参謀』というコンサルティング業を営むなかで、多くの地主さんや経営者の方にお会いし、数々の経営に関わる悩みを聞き続けてきました。それらの悩みの根本的な原因は、『適切な相談相手がいないから』という一つの結論にたどり着きました」(松本さん) 一般的な企業は、財務・会計については税理士や会計士へ、法務については弁護士へ、融資については金融機関へと、分野ごとの専門家に頼るケースは多い。 「特に近年、経営者が専門家に頼る場面は急増しています。財務や法務のみならず、ITやデジタル対策、社員のメンタルケアをはじめとする労務管理など、一つの企業がやることは山ほどあります。 プロに負けない知識をたった一人の人間が頭に詰め込むのは限界があるので、外部の専門家の意見に頼らざるを得ないのです」(松本さん) しかし、この傾向について、松本さんは警鐘を鳴らす。 「専門家はあくまでそのジャンルの知識に長けた専門家であり、“経営のプロ”ではありません。あくまで『専門家の立場からの最適解』です。また、専門家は自分で身銭を切って会社を運営しているわけではないので、『経営者の視点』が大きく欠けている可能性もあります。 特定の専門家の意見を部分的に取り入れることで、経営方針を見誤ってしまう経営者の方は少なくありません。そのような事態を防ぐためには、全体を統括し、経営者と同じ視点で見てくれる『参謀』の存在が必要だと考えています」(松本さん)
◆愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
「プロイセン・ドイツの政治家で、鉄血宰相とも呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの有名な言葉に『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』があります。 愚者とは自分で失敗をしないと失敗の原因を学ぶことができない人物のことで、自分の『経験』からしか学ぶことができない人を意味しています。一方、賢者とは自分は経験していなくても、先人たちが経験したことを『歴史』から学び、より多くの経験や知識を身につけ、失敗を避けることができる人のこと。 これは、経営にも当てはまるのではないでしょうか。自分が失敗して初めて「失敗」を「失敗」として学ぶのではなく、自分よりも経験のある経営者たちから知識や知恵を学ぶことができれば、それだけ成功確率を高めることができます」(松本さん)