Jリーグで優勝圏外の浦和レッズがなぜACLでは10年ぶり美酒を味わえたのか?
戦い方が変われば選手も変わる。メンバーをほぼ固定していた前任者から一転、ハリルジャパンにも選出された長澤和輝らがインサイドハーフとして抜擢されたことで、チーム内に競争も生まれた。 同時に選手たちの自立も促された。アルヒラルとの第2戦では「4‐1‐4‐1」を微妙に変化させ、ボランチを青木拓矢と柏木陽介の2枚に、長澤を1トップの興梠慎三の背後に置く形が提案され、首脳陣にも受け入れられた。 長澤はキックオフ直後から、武器でもあるボール奪取術を前線で再三披露。アルヒラルが攻勢に出てきた後半途中からは運動量も豊富な長澤をボランチに下げ、柏木とラファエル・シルバを2トップとする「4‐4‐2」に変更。これが的中して後者が決勝点をあげた。 もともと技術があり、戦術理解度も高い選手が多いからこそ、シーズン途中の戦術変更にも柔軟に対応できた。そして、2度目のACL制覇で自信を深めた先にはアジア代表として臨む、来月6日からUAE(アラブ首長国連邦)で開催されるFIFAクラブワールドカップがある。 現地時間9日の準々決勝から登場する浦和は、アル・ジャジーラ(開催国代表)とオークランド・シティ(オセアニア代表)の勝者を下せば、同13日の準決勝でレアル・マドリード(ヨーロッパ代表)と対戦する。胸の鼓動が高鳴ってくる。 「昨年のチャンピオンシップ決勝で鹿島に負けて、その鹿島がクラブワールドカップで勝ち上がって、たくましくなっていく姿をテレビで見ていました。僕たちも成長していかなきゃいけない」 槙野がチーム全員の思いを代弁した。悲願成就の余韻に浸るのは一夜限り。アジアから世界へ。新たな目標へ向けて、泥臭さという鎧をまとった浦和は進化を続ける。 (文責・藤江直人/スポーツライター)