Jリーグで優勝圏外の浦和レッズがなぜACLでは10年ぶり美酒を味わえたのか?
分水嶺は7月30日。指揮を執って6年目のミハイロ・ペトロヴィッチ前監督を解任し、その前に監督経験のある堀孝史コーチを新監督に昇格させた荒療治にある。 ミシャの愛称で知られる前任者は、サンフレッチェ広島監督時代に編み出した「可変システム」を浦和にも導入。J1優勝争いの常連となった浦和は昨シーズンのYBCルヴァンカップを制し、前回のACL制覇以来となるタイトルを獲得した。 しかし、相手チームに対策を練られた状況に、長期政権で生じたマンネリ感が拍車をかけたのか。開幕直後は好調だった浦和は5月以降に急失速。解任直前の段階で36失点を喫し、年間順位で1位になった昨シーズンの28失点を大きく上回っていた。 就任直後はミシャ路線を踏襲した堀監督だが、9月17日のジュビロ磐田戦からは、それまでの3バックを4バックに変更。その前にアンカーを、さらにその前に2人のインサイドハーフを配置する、ハリルジャパンと同じ「4‐1‐4‐1」を採用した。 ボールを保持し、華麗なパス回しで相手を崩す戦法から、試合状況に応じてさまざまな高さでブロックを作り、球際の攻防を制してショートカウンターにつなげる。堅守速攻スタイルへの転換が、強豪が集うACLでは特に奏功した。 「確かにミシャの考え方は相手どうこうよりも『自分たちが』というものでしたけど、堀さんは相手のよさを消しながら、自分たちのよさも出すスタイル。どちらがいいということはないけど、勝利に徹する戦いとなれば、いまのやり方が結果を出せるんじゃないかと」 ロマンよりも現実をより強く追い求める。ハリル流にも共通するスタイルが2ヶ月半の間に急ピッチで浸透したと振り返る槙野は、広島時代から恩師と慕う前任者の業績を尊重しながらこう続けた。 「ミシャが残したものは、チームとしても個人としても大きい。ただ、プラスアルファというか、あと少しというところに対して、堀さんが僕たちとコミュニケーションを取りながら、しっかり落とし込んでくれた。ミシャと堀さんの2人が合わさっての、今回の結果だと思っています」