Jリーグで優勝圏外の浦和レッズがなぜACLでは10年ぶり美酒を味わえたのか?
10年分の喜びを爆発させた。2007年に続くアジア制覇を告げる、主審のホイッスルが埼玉スタジアムの夜空に鳴り響くと、DF槙野智章は両手を突き上げながら雄叫びをあげて、周囲の仲間たちに次々と抱きついた。 守護神の西川周作はゴール前で突っ伏して、両手でピッチを叩いている。涙を誰にも見せたくなかったのか。キャプテンのDF阿部勇樹は歓喜の輪から離れて、バックスタンド前で目頭をぬぐっていた。 25日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦。アルヒラル(サウジアラビア)のホームで18日に行われた第1戦を1‐1で引き分けていた浦和レッズは、アウェイゴールの関係でスコアレスドローでも優勝できる状況でキックオフを迎えた。 もっとも、引いて守るつもりは毛頭なかった。アウェイで未知の敵ということもあり、第1戦は意識して守備的に戦った。前売り段階でチケットが完売し、5万7727人の大観衆が詰めかけた第2戦は違ったと槙野が力を込める。 「自分たちの本来の形は攻撃主体のサッカーですから。ボールを保持する時間も長くして、ゴールに向かう姿勢も見せないといけない。ただ、残り10分で0‐0だったら、割り切って戦おうとハーフタイムにみんなと話していました」 両軍ともに無得点で時間が経過する。目安としていた後半35分になる直前に、アルヒラルのMFアルダウサリが2度目の警告を受けて退場になった。数的優位に立ったことで、あうんの呼吸で引き分け狙いから攻勢に出た。 迎えた同43分。MF武藤雄樹の縦パスに上手く反応し、相手DFと入れ替わる形で縦に抜け出したMFラファエル・シルバが右足を一閃。強烈な一撃でゴールネットを揺らした。 「相手が一人少なくなったときに点を取りにいく姿勢を出せたことは、大きく進歩した証かなと」 後方で見つめていた槙野も、チームの成長を感じずにはいられなかった。もっとも、J1戦線に目を移せば、2試合を残した段階で7位。優勝はおろか、来シーズンのACL出場権を獲得できる3位以内に入る可能性も消滅している。 両極端に映る戦いを演じたのはなぜなのか。