木村拓哉、手越祐也、ももクロ、ポルノグラフィティ……ポップミュージックのなかで出会える“ゲーム用語”
音楽、ドラマ、映画、本、漫画、アニメなどと並び、長年にわたって、ポップカルチャーのシーンにおいて大きな存在感を放っているジャンルのひとつがゲームである。特に近年は、コロナ禍でゲームのプレイ人口が増加したことや、アプリゲームの普及、eスポーツの盛り上がりなども相まって、その存在感がより大きなものになっているように思う。それも踏まえて近年リリースされた楽曲を振り返ると、歌詞のなかにゲーム用語を用いたものが多く存在していることに気づく。今回は、そうした楽曲をいくつかピックアップして紹介していく。 【画像】木村家、愛犬との幼少期の思い出写真 最初に紹介するのは、木村拓哉が8月14日にリリースしたアルバム『SEE YOU THERE』の収録曲の「Head Shot」だ。「ヘッドショット」とは、主にFPS(First Person Shooter)で用いられるゲーム用語のひとつで、相手の頭部を打ち抜き大ダメージを与えることを指す。とはいえ、この楽曲はゲームそのものをテーマとしたものではなく、歌われているのは、熱く昂る〈君〉へ向けた情熱的なフィーリングである。象徴的なのは、タイトルに冠されているワードが織り込まれたサビの〈脳内撃ち抜く head shot/油断してる暇は無い〉〈理性壊す head shot/獲物は逃さない〉という一節。FPSを想起させる言葉でありながら、どちらかと言えば、各Aメロの〈静かな衝動〉〈暴れる鼓動〉との流れも相まって、恋愛における駆け引きを伝える普遍的な歌詞になっているように思う。 なお、9月4日にリリースされたsyudouの新曲「あいきるゆぅ」の歌詞にも、〈ドラマチック サディスティック/ドメスティック カオスティック/ヘッドショットよりももっと/キツいヤツをあげるよ〉というように「ヘッドショット」という言葉が用いられている。また、7月に行われたVaundyの幕張メッセ公演『Vaundy one man live "HEADSHOT" at Makuhari Messe』にも「ヘッドショット」という言葉が冠されていたが、こちらはプロフィール写真の意味で用いられている。 木村拓哉の「Head Shot」のように、ゲームそのものをテーマとしていないにもかかわらず、歌詞のなかにゲーム用語が登場する楽曲はほかにも多く存在していて、そのひとつが、手越祐也「OVER YOU (feat. マイキ)」だ。この曲は、手越がソロデビュー1周年の2022年7月7日にリリースした楽曲で、彼にとっての所信表明のようなナンバーだ。楽曲制作を担当したマイキは、手越が言いそうなことを同曲の歌詞のなかに散りばめたという(※1)。手越は生粋のゲーマーとして知られていて、ゲーム専門の公式YouTubeチャンネル『手越 GAME HOUSE』も有名。本作は、ゲームそのものを主題とした楽曲ではなく、手越の生き様を歌ったものではあるが、随所に、〈エイム合わして〉(エイム=照準)、〈安地だけじゃ意味ないじゃない?〉(安地=安全地帯)という、主にFPSで用いられる言葉が織り込まれていて、それが手越のゲーマーとしての一面を伝える役割を果たしている。まさに、彼が歌うことで輝きが増す一曲だ。