暗号資産の相続で、まさかの〈税率110%〉…相続財産オーバーの課税額に「なにかの間違いでは!?」「いいえ」【弁護士が解説】
日本の相続税は最高55%で世界一高いとはいえ「45%は残るから、まあいいや」と諦めている人もいるでしょう。しかし、暗号資産を相続した場合、相続時の暗号資産の評価額の110%もの税金が取られると聞いても、心穏やかでいられるでしょうか。※本記事は、OWL Investmentsのマネージング・ディレクターの小峰孝史弁護士が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
暗号資産の相続で「最高110%もの課税」がされる理由
暗号資産にも相続税がかかり、最高税率は55%です。ところが、相続税を支払うために「相続した暗号資産を売却」することで問題が発生します。どういうことでしょうか? 下記の事例に基づいて考えてみましょう。 【事例】 死亡日:2023年12月1日 資産内容:現金1,000万円/2017年1月10日に10万円で購入した暗号資産10億円相当 この方の場合、現金は1,000万円しかありませんので、10億円相当の暗号資産にかかってくる約5億円の相続税は払えません。そのため、2023年12月11日に、暗号資産10億円を売却することにしました。 この相続人の行動は「暗号資産を相続により取得後、相続税を支払うためにすぐ売却した」にすぎません。 この10日間で暗号資産の価格はほとんど変化していませんから、まさか所得税がかかるとは思わないでしょう。 ところが、暗号資産の取得原価は「相続時の価格ではなく、被相続人のものを引き継ぐ」こととされているので、被相続人(親)が暗号資産を取得した時点(2017年1月10日)の取得原価で計算されます。そのため、巨額の所得税が発生してしまうのです。 また、相続税納税のため相続財産を売却した場合、「取得費の特例」により所得税を一部控除できますが、暗号資産には「取得費の特例」の適用がありません。 したがって、所得税(最高55%)がまるごと課されてしまいます。 以上の不利な条件が重なることにより、 「所得税の最高税率55%」+「相続税の最高税率55%」=最高110% といった課税がされるといわれているのです。 相続した財産を超える額を納税するのですから、これは異常事態です。まさに「なにかの間違いでは?」と衝撃を受ける話ですが、事実なのです。