暗号資産の相続で、まさかの〈税率110%〉…相続財産オーバーの課税額に「なにかの間違いでは!?」「いいえ」【弁護士が解説】
暗号資産物納による相続税納税はできない
「暗号資産を売って相続税を払うとすると110%も課税されてしまうなら、いっそ暗号資産を〈物納〉しよう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。 実際、参議院議員の熊谷裕人氏がこの趣旨の質問をしました。 ところが、これに対する回答は、 (1)相続税の物納は、不動産や有価証券など相続税法41条2項に列挙されているもののみ、税務署長の許可を得たうえで可能である (2)暗号資産は相続税法41条2項に列挙されていないから物納は認められない というものでした※。 ※ 参議院 「参議院議員熊谷裕人君提出暗号資産による納税に関する質問に対する答弁書」 参照。 要は「物納が認められる財産は相続税法41条2項に列挙されたものだけ。暗号資産は列挙されていないからダメ」という、なぜ物納が必要になったかに踏み込むことのない、門前払いの回答だったわけです。
相続放棄なら「相続財産110%納税」は回避できるが…
相続財産を上回る納税を避けたいなら「相続放棄」という手段があります。 相続放棄とは、被相続人の死後に家庭裁判所に申し出ることで、プラス・マイナスの財産を一切引き継がないとする制度です。 つまり、相続放棄しつつ「生まれ育った家は相続したい」など、ほしい財産だけ相続することは許されませんから、相続放棄は「相続税を払いようがない」ときの最終手段です。
110%もの税金、子に払わせたくない!…事前対策はあるか
自分の子に110%もの負担を負わせたくない場合、事前にどのような対策をできるでしょうか? まず、納税が厳しい理由として「暗号資産の形で持っているから」ということがあります。したがって「暗号資産」を相続させるのではなく、「暗号資産などの資産を持つ法人(会社)」を相続させるという方法が考えられます。 つまり、(1)自分から法人に暗号資産を譲渡(暗号資産投資で利益が発生している場合、この時点で所得税納付は必要になります)したうえで、(2)自分が死亡したとき、自分の相続人(子)が、この法人の価値に応じた相続税を納税する、という2ステップになります。