【バレー】新貴裕(パナソニック)東レへ期限付き移籍の背景 「マジか」と感じた忘れられない思い出は
パナソニックパンサーズは5月1日(水)、セッター新貴裕が6月1日(土)から東レアローズに期限付き移籍することを発表した。その決断の背景と、パナソニックへの感謝の思いとは 同じV1リーグ間、それも上位チームどうしでは珍しい移籍。話を受けた新は、前向きにうなずいた。 「きたか、という感じでした。今年33歳になるので、声をかけていただいたのでうれしかった、という思いはありました」 当初は完全に籍を移す話だったというが、「レンタル(移籍)は僕が希望しました。家族もいるので、パナ(ソニック)の社員として残りたい、という気持ちもあって」。両チームの合意のもと、今回の発表に至った。 V2の富士通時代から攻撃的な司令塔として活躍し、2018-19シーズンにパナソニックへ。主に2枚替えでコートに立つと、そのたびに心は奮い立った。「すっごい経験になりました」と目を見開きながら、常勝軍団での日々を振り返る。 「パナ(ソニック)は強豪で、毎年Vリーグのファイナルに行くチーム。あと1、2点ほしいときに出るプレッシャーは、1試合を通してプレーするのとはまた違って。この1点を取ればガラッと変わるという場面でプレーしたことは、すごくいい経験になりました。それを6シーズンずっとやってきたので、1試合を戦い抜くプレッシャーは特に感じないです」
脳裏に焼き付く試合がある。2020-21シーズンのV・ファイナルステージ ファイナル3。2位で臨んだパナソニックは3位のWD名古屋に1-3で敗れ、勝負の行方はゴールデンセットへもつれ込んだ。第4セットに途中出場していた新は、その大一番でのスタメン起用を告げられた。 「マジか! と思いました(笑) あの経験は忘れられないです。でも楽しかったですし、あの場面でもツーアタックを打てたので、すごく気持ちよかったのは覚えています」 25-21でチームを勝利に導いた。サントリーにストレート負けを喫したが、ファイナルの舞台も経験した。 長年高め合ってきたライバルたちが、今度は相手コートに立つ。 「こういうプレーをするんだろうな、というのはわかっていますが、相手になるとまた見方が変わると思います。対応できるかどうかはやってみないとわかりません。ただ、アドレナリンは出るので。勝ち負けよりも楽しんで、ツーアタックやサーブでどんどん攻めていきたいです」 相手の意表を突く攻撃を決めて、ときには止められて。ネットを挟んでニヤリと笑い合う姿が、古巣との戦いで見られそうだ。 新 貴裕 しん・たかひろ/1991年8月10日生まれ/身長181㎝/最高到達点325㎝/石川県工高(石川)→明治大→富士通→パナソニック/セッター 2013~18年は富士通でプレーし、2018年からパナソニックへ。主に2枚替えで活躍し、2022-23シーズンにはVリーグ通算230試合出場を果たしてVリーグ栄誉賞を受賞した 文/田中風太(編集部) 写真/石塚康隆(NBP)、青山義幸
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