韓国総選挙・与党大敗なら日韓関係にも悪影響
■政策のせいで人気を落としたわけでもなく… だが、中道や保守の立場の人たちに話を聴くかぎり、夫人のスキャンダルはともかく、経済の課題は中長期の流れもあり、尹政権に大きな失政はないということにはおしなべて同意する。 私が「日本では、自民党の裏金問題が発覚したことで岸田文雄政権の支持率は急落、と因果関係がわかりやすい」と言うと、韓国の人たちは「そうした明確な大失態は起きていません。確かに、なぜ尹政権が不人気なのかを外国の人に説明するのは難しいですね……」と苦笑する。
そして、たいてい、しばし考え込んだのちに「政策がどうこうというより、彼(大統領)のスタイルというか、態度というか、物言いというか……。何を考えているのかわからないことが多すぎるんですよ」という具合に言葉を紡ぐ。 具体例としてソウル在住の30代男性があげたのが、いまだに続く医者たちの職場放棄だ。 「自分も初めは医学部の定員増加に反対する医療界に『なんて自己中心的な』と腹が立ちましたよ。でも、1カ月以上も各地の病院で手術が延期され続ける事態になって、むしろ政府が根回しもなく、一方的に医学部拡大を打ち出したことのほうが問題だと考えるようになりました」
とりわけ失望したのは、この問題で尹大統領が4月1日に発表した談話であったという。大統領は、医療界が「より妥当な(医者不足対策の)案を持ってくれば、いくらでも議論は可能」とは述べたものの、全体としては「医学部増員の政府方針は国民のため」と自身の正当性を強調した。 それなので、ほとんどの韓国メディアが「尹大統領は医学部定員増加の必要性を改めて強調した」というトーンで報じた。 ところが、談話が発表されたあと、改めて大統領室の高官が記者たちの前に姿をみせて「いやいやいや、強硬姿勢ということではない。大統領としては医療界と話し合う意思を初めて明らかにしたもの」と補足説明をした。それを受けて、各メディアは「大統領が医療界と対話へ」と軌道修正することとなった。