石破政権の目玉政策「最低賃金1500円以上」...企業の半数「実現不可能」 財界も賛否両論真っ二つの事態
最も時給が高い東京都でも、4社に1社が「不可能」
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した東京商工リサーチ情報本部の内田峻平(うちだ・しゅんぺい)さんに話を聞いた。 ――5年以内に時給1500円に引き上げることが「不可能」と答えた企業が約半数という結果ですが、調査担当者としてはどう評価しますか。予想より多いでしょうか、少ないでしょうか。 内田峻平さん 個人的には多いと感じました。「不可能」の割合が最も低かったのは東京都の26.0%です。2024年度に東京都は1163円と、全国で最も平均時給が高いところですが、それでも約4社に1社が「できない」「不可能」と考えている計算になります。 地方にはまだまだ平均時給が低いところがたくさんあります。時給を引き上げられないと「人件費高騰」倒産など、倒産を押し上げる要因になりかねません。 ――5年以内で時給1500円に引き上げるには合計約42%、年率にして毎年7%台の継続的な賃上げが必要ですが、担当者として可能だと思いますか。 内田峻平さん 中小企業の収益力の引き上げは想定以上に難しいのが実情です。しかも、物価高や社会保険料の対象拡大などもあり、今後5年以内の1500円の実現は現状では難しいと考えます。
「払えなければ市場から退出すべき」は強者の論理
――経済団体の中でも、日本商工会議所や経団連のように、2020年代中に時給1500円に引き上げることに慎重な一方、経済同友会のように「1500円を達成できない企業は市場から退出し、支払える企業に人手が移れば経済は活性化する」と時給引き上げを加速すべきだという考えの団体もあります。経済団体の中で意見が割れていることについてはどう分析しますか。 内田峻平さん 現在の環境を考慮すると、慎重な見方が妥当と考えます。働く人からは当然引き上げを求める声が出てくるでしょう。それだけに机上の空論ではなく、現実的な企業の立場と働く人の声を聞くことが必要だと思います。 ただ、支援をどこまでするかの話が出ないまま、「払えなければ市場から退出すべき」との意見は強者の論理だと思います。 ――ところで、業種別調査結果を見ると、時給1500円を達成している企業が金融保険業や情報通信に多い一方、「不可能」だと答える企業が小売業や製造業が多い理由は何でしょうか。 内田峻平さん 専門性が求められる業種は、もともと賃金が高く時給1500円を達成している割合も高いです。これは製品や提供するサービスの付加価値との関係も大きいと思います。 一方、製造業や小売業など、付加価値を高めることが難しい業種、値上げが難しい業種は顧客離れなどを懸念し、収益力の向上が難しいことを反映しているのかもしれません。