チェルシー復活の立役者 プレミアリーグ初挑戦のイタリア人指揮官は何をしたのか
もちろん、ポチェッティーノの仕事を軽視することはできない。2022年5月からの現オーナー政権下、主力どころかチーム全体の若返りに拍車がかかった昨季、「潜在能力の寄せ集め」は、後半戦で「チーム」として機能し始めていた。最終的なトップ6フィニッシュにより、後任監督がリーグ戦控え組にモチベーションを維持させる手段と同時に、最も現実的なタイトル獲得ルートとして活用することになるカンファレンスリーグ出場権がもたらされた。 とはいえ、その"チーム"は、後を受けたマレスカのもとで、緩急どちらでも見応えのある攻撃的スタイルを身につけつつある。相変わらずキーマンと言えばパーマーで、昨季の右ウイングではなく、より敵に注視されやすいトップ下を定位置としながら、リーグ戦18試合で計18点に直接関与している。だが、「ワンマン」ではなくなってきた。 昨季は、パーマーにゴールもアシストもなかったリーグ戦で計8ポイントしか奪えずにいた。それが今季は、第18節までに計12ポイント。1トップとして、攻撃にタメを作ることもできれば、積極的に裏を狙う意識も強いジャクソンの9ゴール3アシストをはじめ、チームメイトによる得点面での貢献度が高まっている証拠だ。 結果としての計38得点(2位)と35ポイント(3位)という今季プレミアでの数字により、マレスカは巷で「チャンピオンシップ・マネージャー」とは呼ばれなくなった。それは、国内2部リーグと人気シミュレーションゲームの名称にひっかけ、トップリーグでの実績がなく、オーナーの言いなりになる新監督という意味を込めた蔑称だった。 そして、チェルシーの所有団体の顔であり、国内メディアのマッチレポートでも言及が珍しくなかった、トッド・ベーリー(ドイツ系アメリカ人の実業家)という名前を見聞きする機会もめっきり減った。この状態が後半戦でも続くようであれば、より具体的に見えてくるはずだ。近未来に長期的な成功が見込める新チェルシー像が。
山中忍●文 text by Yamanaka Shinobu