チェルシー復活の立役者 プレミアリーグ初挑戦のイタリア人指揮官は何をしたのか
【現実に目を向けた戦いをする指揮官】 ボールを支配して試合をコントロールする嗜好は、チェルシーでも変わらない。先のフルアム戦後にも、当人が「バスケットボールの試合」と表現する、目まぐるしく攻守が入れ替わる時間帯があったと、チームへの苦言が聞かれた。 自軍が追加点に躍起になっていた後半13分のこと。カウンターでボールを持ったコール・パーマーが、CFニコラス・ジャクソンの早すぎた動き出しを見て取り、いったんボールを後ろに戻してビルドアップ再開を選択すると、チェルシーのベンチ前には、頭上で拍手をして賛同を示す指揮官の姿があった。 その2分後には、「なぜ?」とでも言いたげに、両手を広げて天を仰ぐ仕草。スタンドからは歓声が起こっていたのだが、左ウイングで先発したジェイドン・サンチョが、ドリブルで袋小路に突っ込んでいった場面だった。 ただし、つなぎへの固執は見られない。むしろ、攻撃レパートリーのひとつとして適宜の速攻が見られる。マンチェスター・ユナイテッドからレンタル移籍中のサンチョを最新メンバーとして、基本とする4-2-3-1システムの2列目アウトサイドのドリブラーが「過多」と言われるほどチームに揃っていることを考えれば、妥当な選択ではある。とはいえ、マレスカが現実にも目を向ける監督であればこその譲歩に他ならない。 何より、タレント中のタレントであるパーマーに、持ち前のビジョンとテクニックを発揮させる歩み寄りだ。第18節までに、チェルシーが試みたスルーパスの数は、20チーム中で2番目に多い計48本。なかでも極上の1本は、第9節ニューカッスル戦(2-1)で、パーマーがディフェンシブサードから出した、先制アシストにつながるキラーパスだ。 ポゼッション前提のチームでは、御法度とも言うべきロングボールも織り交ぜられている。同節終了時点でリーグ2番手のパス本数に占める割合は少ないが、パス本数トップのマンチェスター・シティよりも190本多い「793」は、20チーム中13位の数字となっている。