チェルシー復活の立役者 プレミアリーグ初挑戦のイタリア人指揮官は何をしたのか
【細かい注文に応える若い選手たち】 若手の多いチームには、判断と実行の両面で個人ミスがつきまとう。 27歳と、正GKとしては若いロベルト・サンチェスも例外ではない。俊敏なセーブで危機を救う反面、不必要なリスクを伴うフィードで危機を招きもする。フルアム戦でも、あわや相手CFのラウル・ヒメネスにショートパスするシーンが。試合終了間際の2失点目は、サンチェスが自軍エリア外の右インサイドからダイレクトで蹴ったダイアゴナルパスが精度を欠き、中盤の中央の敵に届いたことに端を発している。 絶対条件として、攻撃の起点となるパスを要求されているわけでない。サンチェスのロングキックに、自軍ゴール背後のスタンドから皮肉を込めた歓声が上がったのは第6節ブライトン戦(4-2で勝利)。"後方ビルドアップ失敗合戦"のようでもあった試合でのこのひと幕は、2点リードでのハーフタイム突入直前、ベンチ前の指揮官が前線を指差しながら、「ロベルト!」とGKの名を呼んでリスク回避を促した結果だった。 周囲の先入観を覆すマレスカの柔軟性は、選手の起用法にも見て取れる。たとえば、新体制下では定番の「偽SB」役。フルアム戦では左のマルク・ククレジャがこの役を担っていたが、この日の右SBだったマロ・ギュストが任せられた試合もある。左右に関して言えば、ケガで今季リーグ戦での先発が3試合に限られている攻撃的右SBのリース・ジェームズが、うち2試合で、逆サイドで先発している。 ジェームズを含む「偽SB」担当は、1列上がって2ボランチの1枚を前線に押し上げるだけではない。ビルドアップ時には3-2-2-3となる2列目に、トップ下のパーマーと顔を揃えることもある。こうした役割の変更は試合中にも講じられる。 前任のマウリシオ・ポチェッティーノ(現アメリカ代表監督)と比べても、より戦術的で細かい監督の注文に、平均年齢24歳未満の選手たちが応えることは決して容易ではない。だが、会見の席で、口癖のように「英語でどう言えばいいのか......」と言いながら、丁寧かつ的確に説明してみせるイタリア人監督は、選手への伝達にもぬかりはないに違いない。