驚愕のラスト…安達祐実と青木崇高の存在なくしてドラマ『3000万』は成り立たなかったワケ。 最終話考察レビュー
NHKが新しい制作手法を取り入れ誕生した土曜ドラマ『3000万』。本作は、NHKが新たに立ち上げた脚本開発に特化したチーム“WDRプロジェクト”によって制作され、主演は安達祐実、共演を青木崇高が務める。今回は、最終話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】安達祐実&青木崇高なくしては作品は成り立たなかった…貴重な未公開写真はこちら。『3000万』劇中カット一覧
「WDRプロジェクト」の意義を示すには十分な作品となった『3000万』
NHK総合で放送中の土曜ドラマ『3000万』がついに最終回を迎えた。複数の脚本家が“ライターズルーム“という場に集い、共同執筆する海外ドラマの手法を取り入れた「WDRプロジェクト」の第一弾作品とあって、初回から世間の注目度は高かったように感じる。 新しいドラマが生まれそうな予感はあった。一方で、「ごく普通の夫婦がある日突然3000万もの大金を手にしたことで泥沼にハマっていくクライムサスペンス」というログラインだけを聞くとありがちな気がしていたが、放送が始まってみると良い意味で裏切られ、どんどんハマっていった。 多くの人を夢中にさせたのは、その先の読めない展開だ。事故相手のソラ(森田想)が所有していた3000万を、誰も見ていない、ソラも意識を取り戻さないかもしれないという理由から自分たちのものにしようとした祐子(安達祐実)と義光(青木崇高)。だけど、その計画は割と早々に破綻している。 ソラはすぐに意識を取り戻すわ、彼女が所属していた特殊犯罪組織に目をつけられるわで、散々な目に。結局、手に入ったのは息子の純一(味元耀大)に買ってあげたピアノだけ。後のお金は組織に回収された挙句、落とし前として闇バイトをさせられる。お金に目が眩んで、道を踏み外した代償は想像以上に大きかった。
最後まで視聴者を飽きさせなかったストーリー展開
そんなこともあって、途中から祐子たちの目標は3000万を手にすることではなく、平穏な日常を取り戻すことになっていく。最終的には散々振り回されてきたソラ、自分たちを脅してきた坂本(木原勝利)や長田(萩原護)と手を組み、組織のボスを倒そうとするどんでん返し。 坂本は逮捕されてしまったが、祐子は3人だけでボスの自宅に乗り込むという、この観ている人を最後まで飽きさせなかったストーリー展開は、きっと4人のライターが「ああでもない、こうでもない」と議論する中で生まれたものなのだろう。年齢も性別も生い立ちも経験も一人ひとり異なる人間が集まれば、こんなに新しいドラマが生み出せる。 本作は、「WDRプロジェクト」の意義を示すには十分な作品だったと言えよう。 組織のボスは穂波悦子(清水美砂)という日中は税務署で働く普通の中年女性だった。この展開も、実に示唆に富んでいる。 祐子たちの3人は消防設備点検を偽って悦子の自宅に侵入した後、彼女を縛り付け、3000万と、祐子が掛け子のバイトをする際に提出した履歴書を探し始める。そのありかとなる隠し部屋には、膨大な資料が保管されていた。新聞に掲載されている事件のあらまし、取材記録、人心掌握術に関する本など、おそらく悦子はそれらを組み合わせて組織を作り上げてきたのだろう。