ダルビッシュ なぜア軍だけに勝てないのか?
チームの“決め事”を徹底するのは、各選手の能力だ。ボールを見極める選球眼、ファウルカットする技術、進塁打やエンドランを決めるバットコントロール。ア軍には、作戦遂行能力を備えた“役者”が揃っている。 「まず、ビリー(ビーンGM)が、スカウティングをもとに、チームの方針に応じた補強をする。昨日まで、自由にバットを振っていた選手に、『ウチに移籍したんですから、さぁ、今日から四球を選んで下さい』、と言っても、それは大リーグのレベルでは無理な話だ。だから、そんな選手は恐らくウチの補強の対象にはならない。調査をして、この選手は、これができる、と分かった上で獲得に動く訳なので。試合では、対戦相手に応じて、プランを立てる。打線を組み、戦略を練る。私の役目はそれを遂行することだ。大事なことは、コミュニケーションを図って、選手に各々の役割を認識させること。いつ、どんな状況で、何が求められているか。そうすれば、選手は自分の仕事を行う準備ができる。次回対戦は、どうなるか。我々が、やるべきことをしっかりとやれるかどうか、みてみよう」。 ダルビッシュからメジャーで最多の4本塁打を放っている四番のモスは、マネーボール軍団を象徴する存在だ。02年レッドソックスのドラフト上位指名選手は、大器の片鱗をみせながらも、外野の層が厚い古巣では芽が出ず、トレード放出後、3球団目のア軍で花開いた。ダルビッシュに対戦成績、20打数7安打、打率350と相性のいいモスは言う。 「アスレチックスに移籍しても、“決め事だらけ”という訳ではないよ。僕が心掛けているのは、打席のクオリティだ。しっかりボールをみて、打つ。ダルビッシュは球種が多く、どの球でもストライクが取れるので、追い込まれると厄介だ。しかし、彼もたまに浅いカウントで甘く入ってくることがある。それを、絶対に見逃さないつもりで打席に入っているよ。だから、僕の場合、彼との対戦は、むしろ、積極性なんじゃないかな」。 確かに、打った4本塁打は初球が2度、カウント1-0が1度、0-1が1度と全て浅いカウントだ。逆に2ストライクに追い込まれた打席は5回中3度、三振だった。本塁打を打った球種は、全て直球系なので、ダルビッシュが“入り際”に投げる直球には、積極的にバットを振るという明確なプランが見て取れる。基本線に“待球作戦”を敷き、浅いカウントの直球は“積極策”。打者によっては、カウントによる“2段階作戦”を構えているようだ。