ラーメン店が回転率を犠牲にしてでも「麺の硬さ」を選ばせるワケ
多様性が重視される社会になりました。多様性は、簡単にいえば「みんな違って、みんな良い」ということです。個人の好みに合わせた商品やサービスの提供は、消費者の満足度を高める効果があります。 【画像を見る】満足度を高める「価値のピラミッド」 例えば、スターバックスはミルクの種類や量などを変えることによって自分好みの飲み物にカスタマイズすることができます。カレーチェーンのCoCo壱番屋は、ルーのからさを甘口から20辛まで選べます。ライスの量も変更でき、好きなトッピングもできます。 ラーメン屋も好みの具材をトッピングでき、油の量や麺の硬さを指定することができます。これらはいずれも多様性への対応です。このようなカスタマイズ対応は手間と時間がかかります。また、見返りとしての利益も決して大きくありません。 ラーメンを例にすると、売値100円、利益50円の煮卵をトッピングしてもらうために時間をかけるよりも、回転率を上げて1人でも多くお客さんを入れた方が売り上げは増えます。
それでもカスタマイズにこだわる理由
それでもカスタマイズにこだわる理由は利用者の満足度が高まるためです。自分好みの味をつくれる(つくってくれる)ことがリピートしたい気持ちにつながり、それが中長期で通うファンづくりになるのです。 カスタマイズ対応は競合店との差別化にもなります。例えば、最近はグルテンフリーやビーガンなどに対応した料理を提供する店があります。これらはフードダイバーシティーといわれ、細やかに対応することによって顧客層が広がり、店の特徴をつくることができます。言い換えると、多様性への対応は、大量生産と大量消費からの脱却につながるということです。 モノ不足だった時代と違い、今は良質なモノが安く買えます。その環境に慣れたことで、消費者は大量生産されたありきたりなものでは満足しなくなりました。安くて良いものは相変わらず人気がありますが、高くても良いのでさらに良いものを求める人もいます。モノの質だけでなく、モノが提供される環境にこだわる人もいます。 そのニーズに応える手段がカスタマイズであり、大量生産と大量消費によるマスプロダクションに対して、個人の好みをより深く捉えるパーソナルマーケティングが求められるようになったのです。