甲子園を沸かせたロッテの小さな左腕・成田が観客176人の前でデビュー!
昨年のドラフトを前に各球団のスカウトの間で成田の評価には賛否があった。当時、1m69cmと発表されていた小さな肉体が、プロとして通用するのかどうか?の是非である。しかしロッテは、その教えても教えられない制球力と、2種類のスライダーを買って、3位の評価をした。秋田商の大先輩であるヤクルト、石川雅規(36)は、ほぼ同じ体格で、プロ通算145勝を挙げている。 「左腕は大型よりも、センスのある小型が成功する」という説も根強い。 楽天でストッパーの地位を確保した松井裕樹も1m74cmしかない。 またロッテは現状、先発ローテーションに一人も左腕がいないなど、左腕不足というチーム事情もある。 この日の相手が育成選手を軸としたレベルの落ちる混成チームだったことは差し引かねばならないが、成田は、この定説を裏付けるような片鱗を確かに見せてくれた。 キャンプから約2か月間、プロのトレーニングを重ねて体重は2キロアップして73キロに乗った。それでも「まだ体が小さい。まずは75キロが目標」という。この先2軍での登板数が増え、体力が消耗する中、筋量だけでもう2キロを増量するのは簡単ではないが、まだ18歳である。 あせらず、2年先、3年先を見据えて、プロで戦える肉体を作り込めばいいだろう。 しかし、成田が狙うのは一日でも早い1軍のマウンドだ。 「野球漬けの生活の中、体力的にもきつくなっていくと思います。それでもしがみつき、2軍の公式戦で結果を残して、早く1軍に上がれるように頑張りたい」 いつ? 1軍昇格への道はどう描いている? そう尋ねると「いえ。まずは目の前の試合を1試合ずつです」と、成田は正直に、そして爽やかに答えた。 「これから、もっとレベルの高いバッターが増えてきます。今の僕に足りないもの。それは、投手として必要なものすべてですね」 この日、浦和球場に駆けつけた176人のファンは、小さな大投手の伝説のスタートを目撃した貴重な証人になったのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)