甲子園を沸かせたロッテの小さな左腕・成田が観客176人の前でデビュー!
千葉ロッテのドラフト3位のルーキー、成田翔投手(18)が5日、浦和球場で行われた2軍のフィーチャーズとのチャレンジマッチにプロでの実践に初先発、3回を投げて2安打1失点の内容でデビューした。チームは、その後逆転、同じくルーキーの平沢大河(18)の2ランも飛び出して勝ち負けはつかなかった。秋田商時代に1m69cmの小さなエースとして夏の甲子園でベスト8入りを果たした左腕は、今後、2軍で経験を積みながら1軍昇格を目指すことになる。
千葉ロッテの2軍が本拠地とする浦和球場の観客席は、一、三塁側に小さな内野席しかない。この日の観客は176人。それでも平日としては異例のほぼ“満員”なのだが、成田は、あの5万人を越える大観衆の中で熱投を繰り広げた「甲子園よりも緊張した」という。先発を告げられたのは、1週間前。前夜はぐっすりと眠れたが、試合開始、30分くらい前になってプロの世界のマウンドに初めて立つ異様な高ぶりに襲われた。 「何かふわふわした感じで高く抜けたボールが多かった」 秋田商時代から制球力は高校生離れしていた成田だが、指にボールがかからない。一死から楽天の育成、島井寛仁(25)にコツンとバットを合わせられレフト前にヒットを落とされると、二死をとってからヤクルトの2年目、原泉(23)に対して3球も続けてボールがスッポ抜けた。四球。しかも二塁まで盗まれ、一、二塁と得点圏に走者を背負った。 5番に入っていた巨人の育成、芳川庸(22)に、バッティングカウントから低めを狙ったストレートを三遊間に弾き返され、あっさりとプロ初失点を記録してしまった。だが、ここからの修正能力が、成田の非凡なところ。 「(2回からは)冷静になって落ち着けた。低めにボールを集めることができた」 我を取り戻した。 仕切り直しの2回の先頭打者は、西武で豊富な1軍経験のある金子一輝(20)。プロでも異質と言える縦に落差のあるスライダーで芯を外してショートゴロ。三者凡退で終わらせ、成田はテンポを取り戻した。 3回にも、先頭の西武のルーキー、大滝愛斗(18)を横のスライダーでレフトフライ。秋田商との対戦はなかったが、夏の甲子園でベスト8に進んだ花咲徳栄の4番だ。一巡して島井、楽天の育成、榎木葵(23)と続いた左打者には、いずれもストレートで勝負した。詰まらせて揃ってセカンドゴロである。3人をわずか6球で料理。失点の後は本来の成田らしさをアピールして、背番号と同じく「41」球でマウンドを降りた。1m70cmと発表されている体がマウンド上で大きく見えた。 「押していくピッチングが持ち味なのに引いている部分が目立って、持ち味を発揮できませんでした。キャンプでバラついていたコントロールが、この1か月で徐々にまとまってきていたのに、それもできなかったのが悔しい。腕も振れていたか、と言えば、できていません。コーチからも『フォームが小さい、ブルペンのダイナミックスさがない』、と言われています」 反省が先に口をつく。 縦、横の誇れる2種類のスライダーについては、「1球だけ良かったのがありましたが、ファウルにされました。思った場所に投げることができていないので、いいとは言えません」と不満気だったが、この日、ネット裏のチームのスピードガンが最速140キロを示したストレートに話が及ぶと、少しだけ少年のようなあどけない笑顔がのぞいた。 「ストレートで押していけたのは収穫。詰まらせることもできたし自信ができました」 自己最速の146キロにはまだ程遠いが、最後の打者2人をストレートで抑え込んだことは自己評価できた。「変化球が武器の投手であってもストレートの質がすべて。質のいいストレートが投げることができれば、その他が生きる」。元中日の“レジェンド”山本昌の持論をふと思い出した。