価格転嫁率は40.6%、価格転嫁は伸び悩み
「価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)」
2024年の春闘において、大企業を中心に多くの企業で昨年を上回る水準の賃上げの流れが生まれている。帝国データバンクの調査でも、2024年度の従業員の賃上げ率は平均4.16%増と試算し、今後の景気回復には継続的な賃上げが欠かせないとしている。 一方で、高めた人件費を適正に商品・サービスへ転嫁することが難しいといった声もあがる。加えて、長らく続く原材料価格やガソリン、電気代などのエネルギー価格の高止まりは、収益を圧迫し続けており、2023年の物価高倒産は775件発生。一部の価格転嫁だけでは包括できない状況も生まれていると言えそうだ。 そこで、帝国データバンクは、現在の価格転嫁に関する企業の見解を調査した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行った。
コスト100円上昇に対する売価への反映は40.6円、昨年7月から価格転嫁率はやや後退
自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は75.0%となった。 その内訳をみると、「2割未満」が24.4%で最も高く、「2割以上5割未満」が15.6%、「5割以上8割未満」が17.1%、「8割以上」が13.3%、「10割すべて転嫁できている」企業は4.6%だった。 他方、「全く価格転嫁できない」企業は12.7%となった。前回調査(2023年7月)より0.2ポイント低下したものの、依然として価格転嫁が全くできていない企業が1割を超えている。
また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は40.6%となった。これはコストが100円上昇した場合に40.6円しか販売価格に反映できず、残りの約6割を企業が負担することを示している。 企業からは、「材料費の価格転嫁はスムーズにできたが、経費や人件費の価格転嫁ができていない」(機械製造)や「ある程度は価格転嫁できたが、エネルギーや原材料の上昇はとどまることを知らず、まったく追いついていない」(飲食料品・飼料製造)といった声があり、価格転嫁ができた企業は増えたものの、前回調査(43.6円)から3.0円分転嫁が後退した。