「電話のかけ方がわかりません」内線すらかけられない若者も…電話恐怖症を量産している「雑談の減少」ともうひとつの理由
トラウマの経験が尾を引いている
不慣れな電話応対でクレームが来たり、上司から叱責を受けたり、モンスターカスタマーに当たってしまうと、電話がこわくて出られなくなることがあります。 仕事上での失敗の経験は誰にでもあるものですが、電話にまつわる失敗がトラウマにまで発展してしまうのは、相手の顔が見えない電話の特殊性にあるでしょう。 というのも、顔が見えないと攻撃性がエスカレートすることがあるからです。以前、私が電話相談の仕事をしていたときは、電話で暴言を吐かれたことが何度もありました。 対面ではそういうことがないのに、顔が見えない電話だと、とたんに攻撃性が増すのです。 相手の電話の声が小さくて聞き取れず「もしもし」と呼びかけたら、「もしもしと言うな!」と怒鳴られたことがありますし、「おまえは仕事があっていいよな」と散々嫌味を言われたり、不意に脅迫じみた言動を浴びせられることもありました。 電話相談員は原則として、こちらから電話を切れないので、不満のはけ口に使うにはいいカモになります。 電化製品のサポートセンターにいる相談員に聞いた話だと、何時間もクレームを言いつづける人や、「この商品の説明をしろ」と取扱説明書の1ページ目から全部読ませて、黙って切る人もいるそうです。 まともに相手にしていると、本当にトラウマになってしまうので、電話相談を請け負う会社では、相手に問題があるとわかると、以後その電話には出なかったり、別の人が応対したりするといったマニュアルがあります。 プロであってもやり方を心得ていないと、心に傷を負うのですから、ましてや電話に慣れていない人が、顔が見えない電話の相手から罵倒され叱られると、トラウマになり、電話が取れなくなってしまうことは十分考えられます。 文/大野萌子 写真/Shutterstock
---------- 大野萌子(おおの もえこ) 法政大学卒。企業内カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで講演・研修を行う。著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)はシリーズ累計51万部のベストセラーに。 ----------
大野萌子