「電話のかけ方がわかりません」内線すらかけられない若者も…電話恐怖症を量産している「雑談の減少」ともうひとつの理由
固定電話を使った経験値が低い
電話が苦手になるのは、固定電話に慣れていないという時代背景もあるでしょう。 今や、家に固定電話がない家庭も多く、30代以下に至っては保有率は1割を切っています(令和5年通信利用動向調査)。 昭和や平成前半の生まれなら、家に電話があるのが当たり前でした。しかし今の若い世代は幼少期に家の固定電話に出たことがない、という人も少なくないのです。 また固定電話があっても、ナンバーディスプレイになっており、自分が知っている人からの番号のみに出ることが多いでしょう。 会社のように誰からかかってきたかわからない電話に出る経験など、まったくないといってもいいのです。電話機を使った経験がなければ、ハードルが高くなるのは当然です。 固定電話がなければ、当然、電話での取り次ぎや伝言をした経験がありません。 「お母さん、誰々さんから電話だよ」という経験が皆無だとすると、会社でも取り次ぎや伝言にとまどうのは目に見えています。 専門学校で講師をしていた人から聞いた話でびっくりしたことがあります。その学校ではビジネスマナーの一環で、電話の取り次ぎの授業がありました。 オフィスにあるような固定電話が置いてあり、講師が取り次ぎのしかたなどをレクチャーしたあと、「それでは私はこれから職員室に戻るので、私のところに電話をかけてきてください」と伝えたそうです。 そして職員室に戻ったのですが、待てど暮らせど、誰からも電話がかかってきません。どうしたのかと思い、教室に戻ってみると、学生たちが途方にくれて待っていました。 「先生、電話のかけ方がわかりません」 固定電話をさわったこともない学生たちは、受話器を取って、内線の番号を押すという当たり前すぎる動作すらわからなかったのです。 そういえば、ホテルに泊まったとき、若い人たちは室内に置いてある電話にはいっさいさわらないという話を聞いたことがあります。 モーニングコールなどだいたいのことは自分のスマホで用が足りてしまいますし、ルームサービスは頼まない。万一、タオルなど備品が足りなくても、我慢するのだそうです。 なぜかというと、ホテルの人とかかわるのが面倒くさいから。そのうちホテルの電話は部屋の装飾品の一部になってしまうかもしれません。