最新公表の「雇用調整助成金」不正受給 1,264件、最多は愛知県の159件、業種別では飲食業が最多
不正受給公表企業の倒産は62件、倒産発生率は4.9%で普通法人全体の24倍
雇調金等の不正受給で公表された1,264件のうち、62件が倒産していることがわかった。 倒産発生日を時期別にみると、不正受給公表前の倒産は30件で、同日の3件と合わせた33件(構成比53.2%)が公表日までに経営破たんしている。一方で、公表後の倒産は29件で、信用低下が破たんに拍車をかけた可能性がある。 公表された企業1,264件を分母とした倒産発生率は4.9%だった。TSRが6月に発表した「2023年度「倒産発生率(普通法人)」調査では、全法人の倒産発生率は0.2%で、24.5倍と大幅に高い。不正受給に手を染めた企業の生き残りは難しいことを認識すべきだろう。 ◇ ◇◇ コロナ禍の営業自粛や人流抑制などで厳しい業績が続いた企業を中心に、従業員の雇用を維持するために事業規模を問わず雇調金を利用した企業は多かった。特に、対面型サービス業や労働集約型産業などはコロナ禍の影響が深刻だっただけに、雇用下支え効果が大きかった。 ただ、コロナ禍でのスピーディーな支給を実現するため手続きを簡素化したことで、申請の過誤や不正受給も頻発した。厚生労働省によると、各都道府県労働局の遡及調査で発覚した不正受給は、2024年3月末で3,051件、支給決定取消金額は約690億3,000万円に及ぶ。 このうち、支給決定を取り消された金額が100万円以上、または100万円未満でも悪質な事案と判断された不正受給は、社名や代表者名等が公表される。加えて、詐欺罪として刑事告訴されるケースもあり、法人だけでなく代表者などの刑事告訴も起きている。 不正受給金額が歴代2位の(株)水戸京成百貨店(2023年2月公表、受給金額10億7,383万円)をめぐる不正受給では、茨城県警が2024年1月、元社長を詐欺容疑で逮捕している。 不正受給が公表された企業は、コーポレートガバナンス欠如が浮き彫りになり、取引先や金融機関からの信用を失いかねない。また、受給金額に違約金と延滞金を加えて返還する必要があり、資金面への負担も大きい。さらに、公表企業の倒産発生率は4.9%に達し、普通法人全体の0.2%の24.5倍に跳ね上がっており、放漫経営のツケは決して小さくない。 雇調金等の主な財源は、事業主と従業員の双方が負担する雇用保険料のうち、事業主負担分を積み立てた「雇用安定資金」で賄われるだけに、制度を悪用した不正受給には厳しい姿勢が求められる。