ドラッカーが説く、企業の「第一の責任」とは?経営者が財務会計を理解しなければならない本質的な理由
そういう意味で、財務会計の全体像というところから話を始めたいと思います。みなさんに質問です。 「そもそも財務諸表は何のために作るのでしょうか」 日本ではすべての企業が財務諸表を作らなければならないと法律で定められています。 財務諸表を作る目的はいくつもあります。みなさんのような経営陣が、会社の事業実態を数字で把握して、しっかり経営していくための道具として作られるという面があります。また、法人税を計算するための元ネタ帳になっているという意味合いもあります。 ただ、財務諸表を作る一番大きな目的は、会社の外の関係者に、みなさんの会社の事業実態を正しく伝えるためです。 会社の外の関係者とは、出資をしている株主、お金を貸してくださっている金融機関、これからみなさんの会社に出資をしようかと考えている投資家などです。つまり、会社の外の関係者とは、みなさんの会社に関係のある、もしくはみなさんの会社に興味を持っている人たちです。 では、会社の外の関係者は、みなさんの会社の何を知りたいと思っているのでしょうか。みなさんの会社はどういうデータを開示しておけば、会社の外の関係者は満足するのでしょうか。 経済産業省の調べによれば、いま日本には約360万社の会社があるそうです。実は、この360万社の会社は、業種が違おうと業態が違おうと行っていることは同じなのです。すべての企業が行っていることは、下図(図表3-1)で示すように、 [お金を集める]→[投資する]→[利益をあげる] という3つの活動です。 会社勤めをしている人は、この3つの活動をあまり意識することはないかもしれません。ただ、創業社長はこの3つの活動のことをだれでも知っています。 会社を興(おこ)そうと思えば最初に必ずお金が要ります。それを資本金か借入金といった形で集めてきます。何のためにお金が必要かと言えば、それは投資のためです。製造業なら工場建設、飲食業なら店舗調達のためにお金が要ります。そして、その工場や店舗を使って利益をあげるのです。