少子化を生きる ふくしまの未来 第1部「双葉郡のいま」(2) 受け皿 預け先が足りない 子育て世帯転入の壁に
東京電力福島第1原発事故に伴って急激な人口減少に陥った福島県の双葉郡では、若い世代の帰還の動きは鈍い。元々の住民を戻すだけでは自治体として存続していくのは難しい。各町村は、次代の定住者を増やす一環として子どもを含む移住者の呼び込みに力を入れている。 双葉町のJR双葉駅西側に広がる町営住宅団地「駅西住宅」の一角に昨年11月下旬、明るい笑い声が響いた。主婦の綾部優希さん(34)は活発に駆け回る子どもたちを見ながら、優しい笑みを浮かべた。 宮城県亘理町出身で、東日本大震災による津波で実家を失った。東京都内で働いていたころ、自営業の夫直弥さん(54)と出会い結婚。昨年10月、直弥さん、子ども4人と横浜市から移り住んだ。「豊かな自然の中で、子どもと伸び伸び過ごせるのが魅力」と語る。 ただ、全ての面に満足しているわけではない。「保育園や幼稚園など、幼い子どもの預け先が少ない」 ◇ ◇
双葉郡内には現在、小中学校や子ども園が22施設ある。双葉郡の任意団体cotohana(コトハナ)が各施設に聞き取ったところ、昨年4月時点の通園・通学者は約1320人。調査の主体や手法が異なるため単純比較はできないが、原発事故前年の2010(平成22)年に8291人だった年少人口(14歳以下)の約15%に過ぎない。結果、学校や子ども園、保育園が再開するためのハードルは高い。民間施設の場合は採算面の問題もあり、再開に向けた動きは見られない。 双葉町は今のところ、町内で教育活動を再開していない。綾部さんは当初、長女(10)と長男(7)を浪江町の「なみえ創成小」に通わせ、併設の認定こども園「浪江にじいろこども園」に次男(5)と次女(1)を預けようとした。次男は1月に入園予定だが、次女は受け入れ枠が空くのを待つ「待機状態」になった。 園によると、保育希望の増加を受け、待機児が出ないように調整はしている。ただ、該当する子どもの年齢などによっては受け入れが難しい場合もあるという。