北海道のど真ん中「新得町」 元テレビADが「第二の故郷にしたい」と語る魅力
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
3月14日、東京新聞の朝刊にこんな一面広告が出ていました。「新得町を盛り上げるために“あなたの力”をお貸しください」……地域や住民支援のために活動を行う「地域おこし協力隊」の広告です。 地図で新得町を探すと、まさに北海道のど真ん中にあります。5500人ほどの人口に対し、牛の数は約3万6000頭。「そばのまち」でも知られ、9月の新そば祭りには約2万人が押し寄せます。 町の面積の9割が森林であり、森を育む水が豊富です。町内には6つのダムがあって、7つの水力発電所が稼働。新得町から生み出される電力は、何と約19万世帯分。また「スポーツ合宿のまち」でもあり、陸上競技場などのスポーツ施設をはじめ、大自然を生かした乗馬やラフティング、リゾート施設や温泉施設も充実しています。
東京から「とかち帯広空港」まで、飛行機で約1時間半。帯広からJRで約30分。高速道路なら帯広から約1時間。JR新得駅には1日22本、特急が全便停車するほどアクセスがいいので、多くのスキーヤーから新得町の「サホロリゾート」が注目され、特に外国人スキー客が押し寄せるほど人気のリゾート地になっています。 まさに新しく得るものがいっぱいの「新得町」ですが、この町も悩ましい問題を抱えています。それは人口減少や少子高齢化……その打開策として、いま大きなプロジェクトを進める新得町に去年(2023年)8月、「地域おこし協力隊」の若き隊員が赴任しました。
渡辺晴喜さんは、福島県出身の26歳。子どものころから「サラリーマンになるより起業したい」という夢を持っていました。東京の大学に進んで経営学を学びますが、就職活動に悩み、どうにか入った会社も半年で辞めてしまいました。 その後、YouTubeなどの動画撮影や編集が得意だった渡辺さんは、映像に興味があったのでテレビ制作会社に就職。ADとして人気バラエティ番組の制作に携わります。しかし、テレビADの仕事は想像以上に過酷でした。 「3日も寝ずに仕事したり、1週間ほど家に帰れなかったり、それが当たり前の世界でしたね。いまとなってはいい思い出ですが」と笑います。その番組で「人気の移住地ランキング」を取材したとき、渡辺さんは「地域おこし協力隊」の存在を知りました。 「地方に暮らしている人がイキイキして見えたんです。僕も田舎出身なので、自然に触れ合いながら生活してみたいと思って……」