【有馬記念】 レガレイラ超加速ラスト11秒4 ダノンデサイル軽快に6F83秒2
<追い切りの番人> 有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)の最終追い切りが18日、東西トレセンで行われた。注目馬の調教を掘り下げる「追い切りの番人」は東西で3歳馬をチェック。美浦では、井上力心記者が、復活を狙うレガレイラ(牝、木村)の瞬発力と身のこなしを評価。栗東では、岡本光男記者がダービー馬ダノンデサイル(牡、安田翔)の軽快な走りに、仕上がりの良さを感じ取った。なお、有馬記念の枠順抽選会はきょう19日に行われる。 ◇ ◇ ◇ レガレイラの背にはこれが初コンタクトとなる戸崎騎手の姿があった。最終追い切りにジョッキーがまたがるのは、同馬のキャリアでは初めてだ。木村師は「レガレイラがどういう動きをするか。折り合い、ゴールへの頑張る姿勢などを感じてもらいたかった。厩舎としても心配ないこと、戸崎さんにもアグレッシブに行って問題ないことを体感してもらいたかった」と意図を説明した。 動きは滑らかだった。ウッドコースで人馬しっかりと呼吸を合わせ3頭併せの真ん中から気持ち良く末脚を伸ばした。6ハロン84秒6と全体時計は控えめでもラスト1ハロンは11秒4。その前の1ハロンから一気に1秒8も縮める“超加速”だった。 戸崎騎手 調子は良さそうですし何の問題もないですね。いい馬だなと感じました。スタートもスムーズに出たし操縦性も問題なかった。気分を害さず走れればおのずといい脚を使えると思います。 前向きな言葉が並び、初騎乗のパートナーに自信を深めた様子がうかがえた。 前走エリザベス女王杯で発馬に改善が見られ、陣営が中間修正に努めていた走りのバランスにも合格点が出た。1週前、週末と強めの負荷をかけた中でも馬はエネルギッシュで心身の充実ぶりが伝わってくる。「ホープフルSはとにかく強かったイメージ」と鞍上。強豪牡馬を蹴散らした衝撃の走りを中山で再び。今年未勝利の鬱憤(うっぷん)を晴らす準備は確かに整った。【井上力心】 ◆牝馬の有馬記念制覇 過去に7頭。過去10年では14年ジェンティルドンナ、19年リスグラシュー、20年クロノジェネシスが勝利している。3歳牝馬のレガレイラが勝てば60年スターロツチ以来、64年ぶりの制覇となる。 晴れ渡った水曜の朝、ダノンデサイルはCウッドを気持ち良さそうに駆け抜けた。力みを感じさせず、大きなフォームでラップを刻み、6ハロン83秒2-11秒6。自ら騎乗した安田翔師が意図を説明する。 「オーバーワークを避けることを前提に抑え込みすぎず、出しすぎず、ストレスを与えず好きなように走らせてあげ、最後スラッとしていいよという気持ちで解放してあげたくらいです」 人間の短距離走の練習に「流し」というのがある。全力疾走の一段下のスピードで走るトレーニングだが、これが気持ちいい。デサイルの伸び伸びとした様子を見て、これは「流し」だなと感じた。 菊花賞前とは明らかに違う。ダービー以来だった当時はCウッドで6ハロン70秒台のラップを2度マークしていた。それが今回、Cウッドでの2度の追い切りは82秒5(11日)と83秒2。1週前追い後、安田翔師は「菊花賞前のように強い負荷をかけたり心肺機能を高めようとするのではなく、ジョッキーに現状でのバランスや推進力を確認してもらった」と話した。今はハードな調教をしなくても力を出せる仕上がりで、それを軽快な走りが裏付けている。 菊花賞前、横山典騎手は「本当なら1回使う方がベストと思うが、ステップを使うとなると暑い時に動かさないといけないので、菊花賞からになった。この先もまだまだ大きなところに走ってもらわないといけない。この馬の芽をつぶさないために」と語っていた。その最初の“大きなところ”が、この有馬記念。どんな走りをするか楽しみだ。【岡本光男】