PDA「ザウルス」はスマホを先取りした先駆者だった? 今でも中古市場で評価される先進性
つまり従来のPDAのように「製品に搭載されている既定のアプリを使うだけ」でなく、多種多様な用途のためにザウルスを利用できたことを意味します。たとえば「CSIDE for Zaurus」と呼ばれるザウルス向けの統合開発環境を利用することで、Windowsパソコンでザウルス向けのソフトウェア開発が可能でした。 またザウルスをサーバ化したり、ザウルス上に開発環境を構築するといったことも可能でした。開発者にとって極めて柔軟性が高い端末で、後からOSやソフトウェアの追加・削除やカスタマイズができる点などは今日のスマートフォンに極めて近しい環境がすでに実現されていたと言えるかもしれません。
ネットオークションやフリマアプリで人気な「ザウルス」の型番
ネットオークションやフリマアプリで人気な「ザウルス」の型番には、まずSL-C3000が挙げられます。SL-C3000は型番の通り、SLシリーズ。いわゆる「リナックスザウルス」と呼ばれる端末の代表格であり、筆者が確認した限りネットオークションでの落札価格の平均は4,372円(※2024年8月時点)。 ジャンク品でも3,000円を超える価格で落札されており、状態が良い端末では1万5,000円ほどでの取引履歴も見受けられます。なお同様にSL-C1000も人気の型番。こちらも「リナックスザウルス」であり、平均落札価格は4,372円。こちらも状態が良いものでは1万5,000円ほどで落札されています。
「ザウルス」はスマホには進出しなかったの?
PDAの歴史を彩った製品ないしは企業の多くは、スマートフォンにも参入しています。記事の前半でも触れた通り、たとえばパームはスマホ市場に早々から参入し、Blackberryとは対立関係になっています。 無論、シャープも「AQUOS」に代表されるスマホを販売しています。しかし「Zaurus Phone」の名前は聞こえてきません。ザウルスはスマホには進出しなかったのでしょうか。 結論から言えば、ザウルスは同社のメディアタブレット「GALAPAGOS」(2010年)に部分的に要素が引き継がれたと言えるでしょう。 2010年にリリースされたメディアタブレット「GALAPAGOS」はXMDF(電子書籍用フォーマット)に対応しており、このフォーマットにはザウルスで培われた技術が反映されています。 「GALAPAGOS」ではソフトバンクから003SHと005SHが販売されました。つまりスマートフォーンも2機種、登場しています。 しかし「GALAPAGOS」は主に電子書籍市場に参入したものの、国内市場の発展が想定よりも遅かったと見られます。たとえば2010年のGALAPAGOS登場後、2011年にはその中核を担っていたコンテンツストア事業についてシャープ社とCCC社の合弁が解消されています。 2024年現在、電子書籍市場が大きな盛り上がりを見せていることは間違いありません。もしかしたらPDA「ザウルス」がスマホを大きく先取りしていたように、GALAPAGOSもまた電子書籍時代を大きく先取りしすぎていた面があったのかもしれません。
オトナライフ