【コラム】イギリスの国際教育と“6人の妻たちの残酷物語”【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■「GK」とは、なんぞや?
ある日、“ママ友LINE”ならぬ、WhatsAppグループにメッセージが届いた。「来週の月曜日、GKあるわよね?」 「GK」とは、なんぞや? 息子に聞いてみると「GK? 知らん…」と言いながら鼻をほじくっている。ため息をつきながら、しばしアプリ画面を見つめる。「GK」というのは何かの略に違いない。ゴールキーパー…グッドカンパニー…いや、それはKじゃなくてCですね。女子高生? いやいや、あれはGKじゃなくてJK…。そこで思考が途絶える。 …いかん、これ以上、何も思い浮かばない。こんな時、頼りになるのは、そう、“ボスママ”しかいない! スポーツ・デー(運動会)の日、麗しいサンドレスを腰のあたりまでからげて裸足(はだし)で100メートルを爆走し、見事、お父さん勢を抑えて優勝した“ボスママ”デボラの姿を思い浮かべながら、メッセージを送信する。「あのぅ、初歩的な質問で恐縮ですが『GK』とは、なんでしょうか?」 返信が来た。「ああ、『General Knowledge』のことよ。来週の月曜日テストだからね」 え…General Knowledgeは「常識」って意味ですよね? 常識の試験があるんですか? 常識って、テストされなきゃいけないものなんですか…? 混乱のあまり、しばし沈黙していると、デボラが何かを察したらしく「息子さん、問題を持って帰ってきてない? 良かったらウチの、送ろうか?」と気を利かせてくれた。 「すみません、お願いします…」と“三顧の礼”スタンプ付きで返信すると、さっそくテスト問題が送られてきた。全部で10問。なんともありがたいことに、デボラの息子・アルフィー君の手書きの答え付きである。だが、その内容を見て目が点になった。「常識…ですか、これ!?」 …ぜひ、皆さんも解いてみてほしい。もし全問正解できる方がいたら、クイズ番組に出場することをおすすめします…!? 【問1】何の見返りも求めずに良いことをする人のことを、何と言うか? 【問2】「スカーフェイス」とのあだ名で呼ばれるギャングスターの名前は? 【問3】ジャマイカにある「ゴールデンアイ」との名称の家に住んでいた作家の名前は? 【問4】ピラト提督がイエス・キリストの代わりに釈放した盗賊の名前は? 【問5】イギリス陸軍で「SAS」とは何の略か? 【問6】Aから始まるアメリカの州を、すべて挙げなさい 【問7】マウントFIJIは活火山か、 休火山か? 【問8】南米の国で始めと終わりが同じ文字の国はどこか? 【問9】ヘンリー8世の最初の妻の名前は? 【問10】アトラス山脈は、どこの大陸で発見されたか? ――マウント「FUJI」を「FIJI」と誤植しているのはご愛敬としても、皆さんは何問、解けたでしょうか? お恥ずかしながら私はマウントFUJI以外、1つも正答できませんでした。こんなん、難しすぎる! 日本人にできるわけないやんか!!と逆ギレしている場合ではない。 デボラが送ってくれた問題用紙を見ると、いつもウチの息子に「テキトー男」と不名誉なあだ名で呼ばれているアルフィー君は、なんと1問しか間違っていないではないか…! 彼我のなんたる差! ウチの息子が1問たりとて正答できないのは目に見えている。さっそくやらせてみるも、息子君、口をぽかんと開けたまま「何これ…問題の意味がわからない」。ええ、ええ、そうでしょうとも。息子の“正常”な反応に安堵(あんど)する…いや、している場合ではない。月曜日に、テストなのだ。