【コラム】イギリスの国際教育と“6人の妻たちの残酷物語”【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■気になる国際学力調査の順位は…?
本来、イギリスはGCSEやAレベルといった全国統一試験で良い成績をとれば、出身階級や経済状態に関係なく高等教育が受けられ、良い仕事につける…という公正、公平を旨とした教育制度をうたっている。統一試験の成績は生涯有効で、履歴書にも記載されるため、有名校を卒業したことよりも、試験の成績が重視されるともいわれる。 では、イギリスの学力は? OECD(=経済協力開発機構)が2022年に実施した学習到達度調査(PISA)の最新調査結果を見てみると、OECD加盟国でイギリスは「読解力」13位、「数学的リテラシー」14位、「科学的リテラシー」15位。日本は…と見ると「読解力」3位、「数学的リテラシー」5位、「科学的リテラシー」2位と、軒並みトップクラス。日本は新型コロナウイルス対策で休校した期間が他の国に比べて短く、そのことが影響した可能性も指摘されているが、イギリスよりはるかに出来がいい。これは一体どうしたことか。
■あなたは、あなたらしく…
そこで再び、担任の先生との会話がよみがえる。私は尋ねた。「知識なんて今やネットで調べればいい時代じゃないですか? 何も覚えさせなくても…こういう丸暗記は苦手な子もいるのでは?」 私の渋面に、彼女は楽しそうに笑いながら言った。「おたくのお子さんも含めて、GKテストが苦手な子は、たくさんいますよ。でも、それならそれでいいんです。クリケットでもラグビーでも、お料理でも聖歌隊でも、算数チャレンジでも演劇でもアートでも、自分が好きなことを精一杯がんばれば、それが一番なんです」 『おたくのお子さんも含めて…』が気になる一方、そうか…と、なんとなく腹落ちする。私のような昭和世代は成功の尺度として、ついつい学問だけに置きがちだが、彼らは「成功」への道筋を、もう少し多様な視点からとらえているのかもしれない。 帰り道、学校のトイレ横の壁に「Be Yourself!」と子どもの字で書かれた虹色のポスターが貼られていた。どんなものが好きでも、どんな夢を描いても、あなたはあなたらしくいればいい――そんなメッセージに、なんとなく、ふっと心がほどける気がした。 ちなみにGK嫌いの息子君、くだんのテストの正答は10問中4問(「ヘンリー8世の妻」含む)だった。最難関と思われた「キャサリン・オブ・アラゴン」を覚えていられたのは、あのサイモンカメラマン直伝の歌の効能に違いない。 ◇◇◇