BMW Motorrad「R 12」はフラットツイン入門に最適!! クルーザースタイルで抜群の親しみやすさを実現
近年のBMWはエントリーユーザーを意識したモデルとして、単気筒車の「G 310」シリーズ(シート高は「R」が785mmで「GS」は835mm)や、並列2気筒車の「F 900 R」(シート高815mm)などを販売していますが、足つき性を重視するライダーにとっては、「R 12」の方が親しみやすいのかもしれません。 さらに言うなら、乗り味もフレンドリーです。そもそも他のエンジン形式と比較すると、クランクシャフトが縦置きのフラットツインは重心が低くて安定感が高いと言われているのですが、「R 12」の場合は車高とシート高の低さによって低重心感が際立っていますし、穏やかなキャスター/トレールや19インチのフロントタイヤも安定感に寄与しています。 いずれにしても「R 12」を体験したら、誰だってホッとした気分になるんじゃないでしょうか。そしてその感触は、「R 12 nineT」は言うまでもなく、「R 18」や「R 1300/1250」シリーズとも異なっていて、私はフラットツインの新しい可能性を垣間見た気がしました。
ただし、「R 12」はフレンドリーさと安定性のみに特化したモデルではありません。 前言と矛盾するようですが、エンジン内に縦置きしたクランクシャフトが生み出すジャイロ効果は、直進から旋回に移行する際の抵抗にならないですし(一般的な横置きクランクのエンジンは、安定成分を生み出すクランクのジャイロ効果が進路変更時には抵抗になる)、穏やかなキャスター/トレールと19インチのフロントタイヤは、車体を倒し込む際の安心感にも貢献してくれます。 もちろん、単純な旋回性は「R 12 nineT」の方が優位なのですが、コーナリングの手応えという意味では侮り難い資質を備えているのです。 そんな「R 12」に“無理矢理”異論を述べるとしたら、車高とシート高を低く設定した結果として、乗り心地がいまひとつなこと……でしょうか。もっともこの件に関しては、とっつきの良さとフレンドリーさを考えると、安易にマイナス要素とは言えません。 個人的には、シートをやや分厚くし、前後サスペンションストロークを100~110mm近辺とした、ツーリング仕様が存在してもいいような気がします。
中村友彦