日産・フェアレディZの頂点に立つ最強の「フェアレディZ432」。432は、高性能エンジンの象徴“4バルブ/3キャブ/2カム”の意味【歴史に残るクルマと技術035】
名機S20エンジンを搭載したZ432はレース仕様のスーパースポーツ
フェアレディZのトップグレードZ432は、標準グレードZと上級グレードZ-Lとは異なるS20型エンジンを搭載した最強モデルで、432は“4バルブ/3キャブレター/2カム”を意味するネーミングだ。 S20型エンジンは、もともとは日産に吸収合併される前のプリンス自動車が製作したレーシングプロト「R380」に搭載されたGR8エンジンがベースで、それから派生し3代目(ハコスカ)「スカイランGT-R」用にアレンジされた名機である。3連装ウェーバー製キャブレターを装着した2.0L直6 DOHCのS20型エンジンは、最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpmの驚異的な性能を発生した。 流麗なフェアレディZのボディに、高性能S20型エンジンと5速MTを組み合わせたZ432の最高速度は210km/hに達し、0-400m加速は15.8秒を記録。車両価格は、標準グレードZの約2倍となる185万円。今なら1250万円に相当するスーパースポーツであり、1970年の鈴鹿1000kmレースで優勝を飾るなど、まさにフェアレディZが誇る最強モデルだった。
ライバルトヨタ2000GTと性能はほぼ同等
フェアレディZ432のライバルは、市販化前の数々のレースで優勝し、スピードトライアルで世界記録を連発したトヨタ2000GT。発売されたのは、フェアレディZ432の2年前1967年5月だった。 リトラクタブルヘッドライトのロングノーズとファストバックの流麗なフォルムに、インテリアにはローズウッド材のインパネやレザーのバケットシートを装備、こちらもスーパースポーツだった。 ライバルの2つのモデルを比べてみよう。 【フェアレディZ432】 3連装ウェーバーキャブ装着/2.0L 直6 DOHCエンジン搭載/価格 185万円/最高出力160ps/7000rpm/最大トルク18.0kgm/5600rpm/最高速度210km/h/0-400m加速15.8秒 【トヨタ2000GT】 3連装ソレックスキャブ装着/2.0L 直6 DOHCエンジン搭載/価格 238万円/最高出力150ps/6600rpm/最大トルク18.0kgm/5000rpm/最高速度220km/h/0-400m加速15.9秒 2つのスーパースポーツの性能はほぼ同等だが、車両価格には大きな差がある。2000GTの価格238万円は、当時の大卒初任給2.8万円をベースに試算すると2000万円にも達する。 走りだけでなく、豪華な装備の2000GTに対して、もともとフェアレディZが誰でも入手可能な価格設定のスポーツカーだったこと、さらに上級グレードZ-Lとの差がほとんど名機S20エンジンの差であったとされるZ432。これにより2000GTとの価格に差が出たのだろう。