DAZN元年にサポーターを激怒させたクルクル問題。開幕節の配信事故を乗り越え、JリーグとDAZNが築いた信頼関係
具体的な事故原因の解説「エラーが蓄積したことで…」
さらに、コンテンツ制作本部長の水野が、具体的な事故原因を解説。今回の問題は、容量が十分にバックアップされていなかったことが原因ではなかったとして、こう続ける。 「エンコーディング・プラットフォームはミラーリング構成でしたが、オートスタート・ストップツールで発生したエラーが蓄積したことで、パッケージングツールが機能しなくなったのが原因と思われます」 それぞれの専門用語について補足すると、「エンコーディング・プラットフォーム」=中継映像を配信用のデータに変換し、最終的に視聴者に届けるためのプラットフォーム。「オートスタート・ストップツール」=ライブ中継後の見逃し配信をする際、試合の開始と終了を自動的に切り取るソフトウェア。「パッケージングツール」=さまざまなデバイスに適したストリーミングを視聴者に届けるための最終的なツール。 試合の開始と終了を自動的に切り取るソフトウェアにエラーが生じ、それが中継映像を配信データに変換するプラットフォームに蓄積されたため、視聴者にストリーミングを届けるためのツールが機能しなくなった――。水野の説明を私なりに解釈すると、このようになる。
謝罪会見でラシュトンが深々と頭を下げた経緯
この日の会見は、1時間25分の長丁場。すべての質問に対して、DAZN側が真摯に答える姿は、出席したメディアに好印象を与えることとなった。私の評価も「謝罪会見としては合格点」というもの。理由は以下のとおりだ。 まず、謝罪会見が事故から4日後という早期に開催されたこと。DAZNのCEOと開発部長、コンテンツ制作本部長が揃って出席し、メディアの質問に対して誠実に回答していたこと。そして何より、外資系企業の経営トップが、深々と頭を下げて反省の意を示したこと。もっとも、ラシュトンが頭を下げたことについては、Jリーグ側からの強い働きかけもあった。村井に確認すると、当日の様子を明かしてくれた。 「会見の直前、控室で『日本には独特の謝罪文化があって、10秒くらいはずっと頭を下げる必要がある』と教えてから、私が手本を見せました。それから事故原因の説明については、わからないことはわからないと正直に伝えて『誠実に調査中』を強調するように伝えました」 気になるのはラシュトンたちの反応だが、彼らはすぐに理解してくれたという。 「ジェームズは『それが日本のやり方なんだね? だったら頭を下げるよ』と言ってくれました。実際には、途中で頭を上げそうになりましたが、それでも嘘偽りも駆け引きもなく、本当に日本でビジネスを成功させたいという思いが感じられました。事故調査についても、軽微な管理上のミスだったことがわかったので、その後の配信も含め、問題なくリカバリーできたと思います」