生活保護を受ける高齢者世帯は増加傾向?60歳代・単身世帯「貯蓄ゼロ」の割合を見る
なぜ高齢者世帯に生活保護受給者が多いのか
生活保護の受給は高齢者世帯がその半数以上を占めます。 なぜ、生活保護の被保護者に高齢者の割合が多いのか、要因を挙げてみましょう。 ●年金受給のみで生活している まずは、高齢者世帯が年金受給のみの収入で生活をしている割合が多いことです。 国から支給される公的年金は、例えば基礎年金(国民年金部分)であれば最高額でも月額は約6万8000円です。 厚生年金額は社会保険の加入期間や報酬額によって異なりますが、現在の夫婦平均の年金受給額は、基礎年金額と合計して月額23万483円です。 令和6年4月分(6月14日(金曜)支払分)からの年金額 現役世代と比較して大きく収入が減るため、貯蓄などの資産がない場合に生活に困窮するケースも多いと考えられます。 ●高齢者の勤労機会が少ない 定年退職を迎えた後、収入を得るために求職活動をしても就労の場を見つけられない高齢世代も多くみられます。 収入を得る機会を得られないと、公的年金以外の収入がないため、生活費を賄うことが難しくなります。 現在は政府でも、少子高齢化に伴い高齢者世代の就労機会を増やす取り組みや法令を整えることに尽力しています。しかし、まだ現状では就労の機会がないために生活費が賄えず、生活保護の対象となる世帯もいることが考えられます。 ●単身世帯の増加 生活保護は、判定の際の最低生活費を計算する際に、世帯人数によって金額が異なります。人数が増えると基準額も増加しますが、その増加率は人数が増えるにつれて下がります。 つまり、収入が同じ人が1人いる場合と2人いる場合とでは、単身で暮らしている方が保護基準額を満たしやすいため、保護対象になりやすいと言えます。
60歳代の貯蓄事情
それでは、60歳代の貯蓄金額はどのようになっているのでしょうか。 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」から、60歳代における「貯蓄ゼロ世帯」の割合を見てみましょう。 ●貯蓄格差の実態 同調査によれば、60歳代の貯蓄額には大きな格差が存在しています。 ・金融資産非保有:33.3% ・100万円未満:8.5% ・100~200万円未満:4.7% ・200~300万円未満:2.8% ・300~400万円未満:4.3% ・400~500万円未満:2.4% ・500~700万円未満:3.5% ・700~1000万円未満:2.8% ・1000~1500万円未満:6.6% ・1500~2000万円未満:4.5% ・2000~3000万円未満:8.0% ・3000万円以上:15.1% 平均:1468万円 中央値:210万円 金融資産非保有世帯が33.3%となっている一方で、貯蓄2000万円以上の割合は23.1%となっています。貯蓄額の二極化が進んでいることがうかがえます。 貯蓄がゼロである世帯は、老後に収入が減少した場合に、収支のバランスが取れずに生活保護になる可能性が高いと考えられます。 老後にゆとりある生活を送るためには、現役世代から計画的に資産について検討をして、収入の減少に備えることが大切です。