不労所得を夢見たはずが残ったのは億の借金…「サラリーマン大家」で失敗する人に共通する「良さげな物件」とは
■自己破産が相次いだ「かぼちゃの馬車事件」 2018年には「スルガショック」「かぼちゃの馬車事件」と呼ばれた巨大不正融資事件がありました。 かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズが企画・販売していた女性専用シェアハウスのブランド名です。「賃料30年保証、利回り8%」といったうたい文句に、不動産投資家は、スルガ銀行から1億円ほどの融資を受け、続々とかぼちゃの馬車を購入したものの、サブリース契約を締結したスマートデイズはわずか数年で経営破綻。スマートデイズに賃料の支払いを滞納された不動産投資家はローンの返済ができなくなり、自己破産が続出。「かぼちゃの馬車事件」として社会問題にまで発展しました。 驚くことに、1000人を超える被害者の不動産投資家のなかには、医者や弁護士、大学教授といった社会的にステータスの高い人たちが数多く含まれていました。その道の一流の人であっても、金融リテラシーの欠如により、こうした被害にあってしまうのです。 ■富裕層が不動産投資で見ているポイント では、富裕層が不動産投資をする際、どこを見て、どんな物件を購入しているのでしょうか。 たとえば、とある富裕層の人は、こんな条件を挙げています。「築年数は気にしない。それよりも、メジャーなエリアで駅から徒歩5分圏内の物件にこだわる」。築年数が古くても、リノベーションをして整えている限り、退去者が出ても利便性のよさからすぐまた次の入居者が決まるので空き室の心配をしなくていい、メジャーなエリアの見極めについては長期にわたって需給がきちんと見込めることが大切で、人口や乗降客数が安定していたり増加していたりするようなところを見ています。また、当然ながら公示価格などの不動産の直接的な指標の動向も見ています。
■物件はむしろ古いほうがいい 僕自身が不動産投資をする際は、自分自身に土地勘のあるエリアであることが最優先。やはり築年数にはこだわりはありません。保有している物件は築25年~30年のものばかりです。 大切なのは、その街の雰囲気を知っていて、そこに暮らす人々の生活を思い描けるようなところにある物件です。住んでいる人たちの活動が活発な場所であれば、築年数は問わず、むしろ築年数が古いために相場より安い価格で購入できることにメリットを感じています。 築30年の物件を安く手に入れて、外国人向けマンションのようにフルリノベーションして付加価値をつけて高い家賃で貸し出す、という投資もできますし、またそういう場所だと将来的に再開発が起こる可能性があり、築年が古いことで割安で買えたものが、地上げや周辺の再開発の恩恵により、大化けする可能性も秘めています。 反対に、「僕だったら手を出さないだろうな」と考えるのは、自分が馴染みのないエリアにある○○ニュータウンや○○の丘といった大手不動産ディベロッパーのビジネスモデルが絡んでいそうな物件です。限界ニュータウンが社会問題になっているとおり、需給を無視した乱開発はいつか必ず破綻します。そうした物件は避け、自分がきちんとイメージできる物件を慎重に選び、手堅く投資をしていくことを心がけています。 ---------- 田中 渓(たなか・けい) 元ゴールドマン・サックス マネージング・ディレクター 1982年、横浜出身。上智大学理工学部物理学科卒業。在学中に学科首席として表彰を受ける。同大学院に進学し、米国ロサンゼルスで、選抜された24人を対象に毎年開催されるビジネスセミナー「CVS Leadership Institute」に参加。個人優勝、チーム優勝を果たす。大学院中退後、53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に内定し、2007年に新卒として入社。瞬く間に金融危機(リーマンショック)が訪れ、ボーナスゼロ、大幅な減給に加え、在籍部署の9割の人員が削減される壮絶な経験をし、どん底に陥る。NHKドラマ「ハゲタカ」の舞台にもなった刺激的な投資部門で、星野リゾートとのジョイントベンチャーによる温泉旅館の再生や、企業価値5000億円を超える会社買収、1棟1000億円を超えるオフィスビル投資や、全国の大型国内リゾートホテルの外資系へのリブランド、企業再生やバリューアップなどのプロジェクトを中心に、上場・未上場株式、債券、不良債権、不動産、インフラストラクチャーなどへのあらゆる投資を行う。退社後は、少数精鋭の投資会社にて勤務。同社の不動産投資の責任者を務める。 ----------
元ゴールドマン・サックス社員 田中 渓