米HPのエンリケ・ロレスCEOが行き着いたマネジメントの正解。「人に優しく、課題に厳しく向き合え」
変化を厭わず、世界にインパクトを与え続ける
──目指すゴールや、マネジメントで最も優先していることは? CEOとしての私のゴールは、この先続いていく会社を次世代のリーダーに残すこと。そのためには、人やプロセスを大事にし、会社の文化を良くすることに注力しています。 会社の文化は、事業戦略よりも重要。気持ちよく働ける場所であれば、従業員は長く会社に留まってくれます。また、環境の変化に臨機応変に対応できますし、どんな困難も乗り越えることができると考えています。 そして、マネジメントにおいて最優先しているのは、人選です。チームが適切な経験や知識、スキル、価値観を持ったメンバーで構成されるよう、細心の注意を払います。 特にリーダーに就く人は、会社の価値観をよく理解し、それに沿った判断ができなければならない。また「公正さを大切にしよう」「成長しよう」「向上しよう」という野心も必要です。必要なときは変化を厭わない姿勢も大事ですね。 ──あなたのモチベーションの源泉は? 将来を見据え、夢を描き、それを実現するために才能のあるチームと一緒に働くことですね。私は自分の仕事が大好きで、本当に楽しんでやっています。そういう気持ちは伝播しやすいので、チームメンバーもそれぞれがもつ仕事を好きになってくれているかと。 ──どのようなリーダーでありたいと思っていますか? 明確な価値観と原則を持ち、それに基づいて意思決定を行える、会社が向かうべき方向性を見定め、遠い未来のことまで考えられる、組織を巻き込み、思い描く夢に到達するため変化を厭わない。そんなリーダーでありたいです。 もちろん収益を上げなければ何もできませんが、それだけを目指すのではだめです。チームや地域社会、そして世界によいインパクトを与えたい。そうしたことに関心を持つリーダーでありたいと思っています。 エンリケ・ロレス(Enrique Lores) HP Inc.プレジデント兼CEO。バレンシア工科大学で電子工学の学位を取得後ヒューレット・パッカードカンパニーに入社。スペイン、米国、ドイツなどの拠点でさまざまな部門のマネジメント職を経験。また、法人向けPCビジネスのゼネラルマネジャー、グローバルのカスタマーサポート&サービスとセールス&ソリューションのシニアバイスプレジデントなどの役職を経験。2015年にヒューレット・パッカードカンパニーの分社を率いる。分社後、イメージング、プリンティング&ソリューション事業を率いた後、2019年にCEOに就任。 Photo: 中山美華/Source: HP
野澤朋代